宮嶋宏幸 ビックカメラ社長
業界首位グループ誕生と騒がれたビックカメラとエディオンの提携。だが、ビックは経営統合を否定した。業界内での生き残りを懸けた戦いが続く中、同社が描く戦略とは。(『週刊東洋経済』6月23日号より)
他社と提携もありうるがビックだけでも成長可能
1:業界2位のエディオンとの経営統合計画を白紙撤回しました。
そもそも、こちらは経営統合を前提にするという考えを持っていなかった。ところが、資本・業務提携を発表した翌日に「ビックカメラがエディオン傘下入り」と報道され、従業員から不安の声が上がった。これはすぐに否定しなければいけないと思い、エディオンとその点を確認させてもらったというのが真相だ。
2:3%の株式持ち合いと業務提携は継続します。どのようなシナジーが期待できますか。
エディオンは家電が故障した際、すぐに修理に駆け付けるなど、お客さんに対してスピード感があり、ビックが強化している白モノ家電の販売にも長けている。そうしたノウハウを吸収したい。まずは発表した8項目(オリジナル商品開発や物流センターなどの共用化)について、しっかり進めていくつもりだ。
3:業界再編が進んでいますが、エディオン以外と手を組む可能性は。
話があれば積極的に考えたい。流通・サービス業という視点からすれば、家電量販店以外との提携もありうる。ただ、ビック単体でまだまだ成長できるという気持ちは強い。年2~3店ペースで出店していくつもりだし、既存店もリニューアルなどで伸ばせる余地がある。また(子会社の)ソフマップを含めれば200億円近い売上高のあるネット販売やテレビショッピングも大化けする可能性がある。大型ショッピングセンターなども研究してみたい。
4:今夏、業界最大手のヤマダ電機が池袋本店の隣に出店します。どう迎え撃ちますか。
ヤマダさんの出店で、池袋には今まで以上にお客さんが集まるんじゃないですか。ただ、池袋の人の流れは(本店のある明治通り沿いではなく)サンシャインシティのほうへできている。そこで、サンシャインに近い池袋東口の総合館、カメラ館を4月にリニューアルした。より多くのお客さんを取り込みたい。
5:メーカーが派遣する応援販売員(ヘルパー)への業務指示・命令が法令違反に当たるとして問題になっています。
売り場では着用するベストの色などで社員とヘルパーを明確に分けているし、ヘルパーとビック社員との関係はうまくいっている。もちろん守ってもらいたい最低限のルールについてはメーカーと話し合い、きちんと考えを理解してから派遣してもらうようにしている。
労働問題については、2004年に(社員への残業代未払い問題で)嫌な思いをしたこともあり、法令順守で業界一の企業を目標に取り組んでいる。ただ(ヨドバシカメラのような)ヘルパー全廃までは考えていない。
(書き手:中島順一郎 撮影:梅谷秀司)
みやじま・ひろゆき
1959年生まれ。84年法政大学卒業後、初の大卒採用としてビックカメラに入社。池袋本店店長、営業本部長などを歴任。2005年11月に創業者の新井隆二・現会長の指名で代表取締役社長に就任。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら