「宇宙関連ビジネス」が一斉に動き始めたワケ 背景には宇宙データ活用への期待がある

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人工衛星を打ち上げるためのロケットだけでなく、人を乗せて飛ばすロケットを開発する企業も出ている。8月には大学発ベンチャーのSPACE WALKER(スペースウォーカー)が、2027年に日本初の有人宇宙飛行の実現を目指すと公表した。同社のファウンダーである米本浩一・九州工業大学教授は「アメリカもロシアも中国も有人宇宙飛行を行っており、日本だけやらない理由はないだろう」と有人宇宙飛行への思いを語る。

右から4番目がスペースウォーカーのファウンダーである米本浩一・九州工業大学教授(記者撮影)

地上から宇宙を楽しむエンターテインメントを手掛ける企業もある。「ALE(エール)」は人工流れ星の事業を展開。流れ星のもととなる金属粒を載せた人工衛星を打ち上げ、宇宙空間で粒を放出、大気圏内に突入させることで流れ星を再現するとしている。すでに、同社には日本航空とファミリーマートが協賛。「流れ星観測フライト」などの話も浮上しており、2020年に初の人工流れ星を流す予定だ。

JAXAも民間事業者と協力し、宇宙事業の創出を目指す方針だ。新しいアイデアを持った民間事業者を選定してパートナーシップを結ぶJ-SPARC(宇宙イノベーションパートナーシップ)という研究開発プログラムを5月に開始。すでに100件以上の応募があるという。

JAXAの岩本裕之・新事業促進部長は「これまで宇宙事業に関するアイデアは多くあったが、小型化や低コスト化などを実現するための技術が追いついていなかった。今は技術が進歩し、より多くのアイデアがあれば宇宙分野にとどまらないイノベーションを起こせるはず」とJ-SPARCの狙いを語る。

軍事利用に対する強い懸念

ようやく動きだした日本のNewSpace。一方で、宇宙業界の関係者からは「日本では軍事利用への懸念が強く、やりづらい面もある」との声も漏れる。

世界の宇宙産業で最も大きい需要は、安全保障などの軍事面にあるとの指摘もある。実際に海外では、ロケット技術がミサイル技術に転用されたり、観測衛星がスパイ目的で利用されたりしている。日本でも同様な事態に陥る懸念がある。

ある宇宙ベンチャーの関係者は「軍事利用されかねない技術だから事業をやめろ、と抗議されることもある」と悩む。軍事利用との境界線をどう引くか。今後の課題になりそうだ。

そのうえで、これまでに培ってきた技術をどう生かすか。日本の宇宙ビジネスの発展には、民需のサイクルを持続的に生み出せるかどうかがポイントとなる。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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