吉野家・はなまる・ガスト「共通定期券」の衝撃 販売価格300円、どれだけお得なのか?
そこで俎上に載せられたのがガストだ。吉野家よりも店舗数が多く、直営であることから機動的なキャンペーンを実施しやすい。ファミリー層の比率も高く、吉野家としては、手薄な客層へのアプローチが期待できる。もともと、吉野家HDの河村社長とガストを運営するすかいらーくレストランツの崎田晴義社長が食事をする仲だったことも今回のオファーを後押しした。
中食市場との競争が激化
一方、打診されたすかいらーくHDとしても、過去に例のないキャンペーンとなるため社内では不安の声も少なくなかったという。同社もガストのほかに、「ジョナサン」や「バーミヤン」、「しゃぶ葉」といった複数の業態を運営しており、割引クーポンなどで相互送客を行ってきた。それでも今回の打診に応えたのは、「われわれのデータだけでは見えないものがある。大きな壁を越えてやる意味はある」(崎田社長)と判断したからだ。
両社の思惑が一致したことで実現した合同定期券だが、今回の取り組みからは外食企業が抱える危機感も垣間見える。日本惣菜協会の調査によると、2017年の中食市場の規模は10兆0555億円(前年比2.2%増)と初めて10兆円を突破。単身世帯や働く女性の増加が市場の拡大につながっている。
一方、外食市場は25兆6561億円(前年比0.8%増)と伸び率が鈍化しており、”胃袋の奪い合い”においてコンビニエンスストアやスーパーの攻勢に押されている。吉野家HDとすかいらーくHDは今回の合同定期券を客数増につなげる構えだが、キャンペーン期間が終われば客数や売り上げの落ちることが想定される。期間終了後も独自性のある商品・サービスを打ち出せるかが重要となる。
吉野家の河村社長は今回の発表会で「競争から共創へ」というキャッチフレーズを掲げ、「外食を取り巻く環境は年々厳しくなっている。消耗戦をやっても仕方ない」と強調した。今回の合同定期券が吉と出るか。各社の9~10月の月次動向が1つの試金石となりそうだ。
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