結果を出すメンタルを鍛えた室屋義秀の軌跡 エアレース王者を指導する白石豊氏の存在

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翌2017年シーズン、白石氏に誓った世界王者となるために、室屋は突き進んだ。3戦を制覇し総合2位で迎えた最終戦(アメリカ・インディアナポリス)を前に、室屋はアドバイスを求め白石氏に電話をした。

メンタルを立て直すような話を聞けるかと期待した室屋だったが、にべもなく電話を切られてしまう。アドバイスよりも白石氏の声が聞きたかっただけなのかもしれない。

「今やれることをやるしかない」と吹っ切れた室屋は、不思議と緊張が晴れて、レースに臨むことができた。強風吹き荒れるなか、非常に難しいレース展開だったが、優勝を決め、悲願の世界王者となったのである。

今シーズンの戦いにも期待がかかる室屋

ディフェンディング・チャンピオンとして迎えた2018年シーズン。開幕戦のアブダビで、室屋は王者らしい戦いをして2位で終えた。続く第2戦のカンヌでは、他のパイロット達が機体とフライトのレベルを上げているせいか、かなりの接戦となり4位でフィニッシュ。室屋は自身の手応えを感じるも、昨年よりも高いレベルとなっているエアレースを楽しんでいる印象を受けた。

そして、2016と2017年に連覇をして期待される日本の千葉大会。室屋はより速く飛ぶために機体を改良して臨んだが、予選では思うようなレース展開を運ぶことはできなかった。そのため機体を改良前の状態に戻して決勝に挑むも、失格により敗退してしまったのだ。会場に集まった数万もの大観衆は、予想外の結末に目を疑っているようであった。

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第4戦のハンガリーにおいても、失格により敗退となった。第5戦はカザン大会(ロシア)が8月25日、26日に開催され、室屋は8位となった。

続く第6戦は9月15、16日にオーストリアで開催される。

年々、高い次元へとステップアップするエアレースで、室屋はかつてない戦いを強いられている。だが、室屋はギリギリの極限状態を楽しんでもいる。

白石氏から教わるメンタルトレーニングの効果により、精神面はかつての室屋より強化されている。現段階での課題は機体の改良とフライトであり、何より本番で失格とならずに飛ぶことだ。

室屋は、昨年の最終戦での死闘を制して世界一に輝いたように、今シーズンの険しい戦いも乗り越えてくれるはずだ。

(文中一部敬称略)

佐久間 秀実 スポーツライター

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さくま ひでみ / Hidemi Sakuma

1976年生まれ。楽しさ・喜び・感動を伝えたい‼︎トップアスリートや著名人に単独インタビュー。国や企業についても執筆。趣味はランニング、サッカー、卓球等のスポーツ。浦和レッズユース第1期生。琵琶湖を徒歩1周(3日)。プロフィール写真は、龍馬の生まれたまち記念館(高知県)で撮影。

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