結果を出すメンタルを鍛えた室屋義秀の軌跡 エアレース王者を指導する白石豊氏の存在
そんな時、立ち寄った書店で偶然にも手にした本『スポーツ選手のための心身調律プログラム』(白石豊共著)が室屋の人生を左右するきっかけとなった。
すぐに白石氏に会うことを決めた室屋は、2010年8月30日に初対面を果たした。そして「レース前に襲いかかる恐怖心や緊張が払拭できないことが悩み」であることを、白石氏に告げた。
一方の白石氏は、室屋が持参したレースの映像を見て驚いた。機体が急上昇や急降下を繰り返し時速370kmのスピードで飛ぶ、今まで見たことのないスポーツだったからだ。数々のトップアスリートにメンタル指導をしてきた白石氏の目には、あまりにも違う次元として映った。
室屋が「7年後の2017年に、世界一になりたいんです!」と、すがるような思いで白石氏に強く語った。白石氏は室屋の言葉に心を打たれ、直伝のメンタルトレーニング指導を行うことになった。
2011年3月11日、東日本大震災発生
室屋がフライトの練習をする拠点は福島だった。大打撃を受けたことで、フライトトレーニングをできるような状況ではなくなった。震災直後の室屋は、この先自分がどうしていけばいいかわからなくなっていた。
さらに追い打ちをかけるように、中止となったエアレースの代わりに出場した曲技飛行世界選手権では予選で敗退した。
「室屋くんは選手でありながら、スタッフの仕事まですべて1人で行っていたんだから、それでは試合にいい状態で入れるはずないよ。よく1人で立ち向かったね」
こんな白石氏が励ます言葉に助けられた室屋は、這い上がり、再び世界一に向かって進み始めた。
2014年にエアレースが再開されると、徐々に手応えを感じ始め、大会で初めて3位の表彰台に立つこともできた。
白石氏によるメンタルトレーニングを続け、性能の高い新型機を導入し、2016年シーズンへと突入した。そして迎えた母国開催である千葉・幕張での第3戦で、自身初となる優勝を経験する。
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