中国で「金融難民」の怒りが爆発しているワケ 抗議に行くと指紋と血液サンプルを採取

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抗議に参加しようとした人々の多くは、指紋と血液サンプルの採取を強制され、北京への旅行を禁止された。130万元(約2100万円)の損失を経験した上海のP2P投資家によれば、抗議を前に北京行きの列車から排除された人さえいたという。彼女は身の安全を懸念して、氏名を明かすことを拒んだ。

デモが事実上鎮圧された後も、CBIRC本部の周辺では数百人の警備員が巡回しており、当局がいかなる形であれ社会不安に対して敏感になっていることを浮き彫りにしている。

CBIRCにはメールでコメントを要請したが、回答は得られなかった。公安部にもファクスでコメントを求めたが回答はない。

国営新華社通信は12日、政府がP2Pセクターのリスク低減に向けて10項目の措置を提案したと報じた。そのなかには、地方当局が新たなP2P業者やオンライン金融プラットフォームの設立を認可することを厳格に禁止したり、P2P融資の返済を逃れようとした借り手は中国の信用格付けシステムのブラックリストに記載されたりすることなどが含まれている。

厄介な整理作業

P2P金融という分野を開拓したのはレンディングクラブ<LC.N>などの米国企業だが、大規模な拡大がみられたのは中国である。資金調達に悩む中小企業を対象とした政府の金融イノベーション推進に企業がただ乗りした格好だ。

業界の拡大があまりにも急だったため、規制当局も追いつけなかった。

P2P金融サイトの多くは、商業銀行にとってはリスクが高すぎるとみなされかねない顧客に融資している。融資が焦げ付きそうな場合に資金を即座に引き揚げたいという投資家が多すぎると、流動性危機につながる場合がある。

また、露骨な詐欺の例もみられる。最も有名なのはe租宝で、90万人以上の投資家を巻き込む76億ドル(約8400億円)規模の、いわゆる「ネズミ講」詐欺である。

中信証券による7月の調査報告では、中国国内の株式市場に上場している企業100社超がP2P金融ビジネスに関与しており、そのうち32社はP2P金融企業の株式を30%以上保有している。

オンライン金融浄化キャンペーンの期限も6月30日とされていたが、中国政府はこれを2年間延長した。だが市場ウォッチャーによれば、この延長は事態を落ち着かせるどころか、より大きな不確実性を生み出したという。

この浄化キャンペーンのもと、現行の規制でさえ基準を満たして認可を得られるのは、1836サイト中、約100サイトにすぎないと中信証券は推測している。そのうち成功できるのは50に満たないだろう。

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