インドを軽視する日本人が知らない大きな波 最先端のITトレンドはこの国から生まれる

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毎年輩出される理工系学部の卒業生は約100万人おり、その中から、20万人がIT業界に採用されている状況だ。

バンガロールにはIT技術者が100万人以上いて、このままの増加ペースでいけば、2020年には200万人を突破し、技術者の規模だけで言えば、シリコンバレーを抜いて、世界最大のIT拠点となる見込みだ。

「インド人がいくら優秀といっても、それは一部の人の話でしょ?」と勘違いしている日本人がいまだに多いが、高度IT人材の層の厚さもレベルも、日本をはるかに上回っている。

最先端の研究開発が盛んに行われるようになったことで、バンガロールでは、シリコンバレーに身を置いたときと同じことができるようになった。それは、今後の世の中に、どのようなITトレンドが訪れるのかをいち早く感じ取れるということだ。

たとえば、今やスマートフォンのOSはアンドロイドが主流になっているのは言うまでもないが、私がバンガロールに着任した2008年当時は、アンドロイド搭載のスマートフォンが登場し始めていたものの、アンドロイドがどの程度のシェアを占めるかは未知数だった。

ところが、バンガロールでは、すぐにアンドロイドが覇権を握ることが見えていた。なぜなら、至るところで、アンドロイド関連の開発が始まっていたからだ。

また日本では2017年あたりから、仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーンが注目されるようになったが、バンガロールでは数年前からすでにいくつものプロジェクトが立ち上がっていた。

かつては、シリコンバレーで生まれたトレンドがヨーロッパや日本などの先進国に伝わり、最後にインドなどの新興国に伝わる、といった流れだったのが、今では、シリコンバレーとバンガロールの双方で、最先端のITトレンドがほぼ同時に共有されるようになり、そこから先進国に伝わるという逆転現象が起きているのだ。

加入者が10億人を突破した「インド版マイナンバー」

ここまでの話を総合すると、バンガロールは「ミニシリコンバレー」といった印象を受けるかもしれないが、バンガロールやインドには、シリコンバレーにはない強みがある。それは、「新興国ならではのイノベーションが生まれる」ことだ。

その代表といえるのが、アーダール(Aadhaar)だ。これは、インドに住む13億人に、12ケタのID番号を割り当てる、「インド版マイナンバー」といえるプロジェクトだ。2010年9月からID番号の発行を開始し、2016年4月時点でその加入者数はついに10億人を突破した。

インドは、戸籍が整備されておらず、個人を証明する手立てがなかったため、公共サービスが受けられず、銀行で口座を開けない人が大勢いた。そうした状況を改善するために、2009年からこのプロジェクトが始まったわけだが、注目したいのは、個人認証の方法が世界最先端であることだ。

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