インドを軽視する日本人が知らない大きな波 最先端のITトレンドはこの国から生まれる

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10本の手の指紋と、目の虹彩の情報を登録することで、カードや暗証番号なしに、個人認証ができる。数年前まで極めて遅れていた個人認証の環境が、世界トップクラスの環境に変わった。

日本企業はシリコンバレーへ、世界はインドへ…

社会インフラの整ったシリコンバレーや先進国からこうしたイノベーションを生み出すことは難しい。一方、インドで生まれたイノベーションは、そのほかの新興国にも広がる可能性を十分に秘めている。

日本では、こうした激変するインド、ましてインドIT業界のことはほとんど知られていない。日本企業はインド市場でのビジネスには興味があっても、インドIT業界に関しては、低価格なオフショア先という程度の認識しかない。ITと言えば、アメリカのシリコンバレーには注目しているが、インドにはまったく興味を持っていない。

一方、シリコンバレーのIT企業をはじめとする世界のトップ企業はもちろん、中国、韓国企業もバンガロールに開発拠点を設置し、規模を拡大してグローバル戦略の拠点としての活用を加速している。社内のキー人材を送り込み、他社よりも早くインドから世界的イノベーションを生み出そうと必死で戦っている。

つまり、冒頭で述べた「インド・シフト」を真剣に進めているのだ。

『インド・シフト 世界のトップ企業はなぜ、「バンガロール」に拠点を置くのか?』(PHP研究所)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ITの技術革新が急速に進む中、あらゆる業界はITとは無縁ではいられなくなっている。いや、ITを中心とした会社に変えていかなければ生き残れない時代になりつつあると言ったほうがいい。

日本企業および日本は、この問題に戦略的に動けているのであろうか? 私にはそうではないように思えて仕方がない。少なくとも世界とインドIT業界の連携の動きにはまったく気がついていない。

インドには、日本では感じられないエネルギーやエキサイトメントがみなぎり、想像以上のスピードで変化している。世界では急速な技術革新と、先進国から新興国へのビジネス・シフトが、まさに同時に起きようとしている。

その中で「新興国にもかかわらず、IT先進国」という希有な国であるインドでは、過去に例を見ないイノベーションが起き始めている。いや、起こそうとしている。

武鑓 行雄 元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社長

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たけやり ゆきお / Yukio Takeyari

慶應義塾大学工学部電気工学科卒業、大学院工学研究科修士課程修了。ソニー入社後、NEWSワークステーション、VAIO、ネットワークサービス、コンシューマーエレクトロニクス機器などのソフトウエア開発、設計、マネジメントに従事。途中、アメリカ・マサチューセッツ工科大学に「ソフトウェア・アーキテクチャ」をテーマに1年間留学。2008年10月、インド・バンガロールのソニー・インディア・ソフトウェア・センターに責任者として着任。約7年にわたる駐在後、2015年末に帰国し、ソニーを退社。帰国後もインドIT業界団体の日本委員会委員長として、インドIT業界と日本企業の連携を推進する活動を継続している。

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