日本には「海老鯛ビジネス」が全然足りない 「お金持ち」が散財したくなる仕組みはあるか
今回見てきたパッケージ型のサービスを、たとえば格安航空会社(LCC、ローコストキャリア)と比較すると、さらによくわかるかもしれません。
LCCは格安な料金設定ですが、オプションを付けていくと高くなる設定です。しかし富裕層向けビジネスはこれとは逆です。とにかく、最初からたくさんサービスが詰まったパッケージ商品になっている場合が多いのです。たとえば、前出のエステサロンのパターンは子供の習い事などでも同じようにパッケージ(回数券)になっていて、金額が大きなパッケージを購入するほど無料優待がたくさん付いている場合が多いのです。
パッケージ商品の場合、一度お金を支払えば、あとは手ぶらで来ることができるので毎回財布を開いたりする(=毎回支出の痛みを味わう)必要もありません。もちろん、残りの回数はシステムでスタッフがしっかり管理しています。店舗側も毎回わざわざ商談をする必要もないので効率的ですし、前払いなので経営する側のキャッシュフローが良くなります。
パッケージを作る側の努力も見のがせません。相手に「買わない理由を与えないほどよく考えられたメニュー」になっていることも多いのです。また、毎月限定で違ったプロモーションを作って、「あの手この手」で商談をしてくることもあります。驚くべきことに、洋服などの値段を3日間限定で半額にして、プロモーションが終わった後に定価に戻すこともごく一般的にシンガポールではあることです。まさに「一期一会の取引」なのです。
実は、私はこの商習慣に慣れるまではプロモーションに踊らされ、「なぜこんなに買ってしまったのだろう」と思ったこともありました。さらに子供の歯科検診からヘアカットなどまでおトクな回数券になっているので、シンガポールにいると常に複数のパッケージを抱えて生活をすることになります。消費者側からすると先払いのため家計には一定の額が必要なのは事実です。
「暇を持て余している金持ちの相手」は大事
シンガポールで生活をしていると超富裕層の方でも気軽に自宅に招いてくれたりします。そこで気づいたことにお金持ちは案外暇だということです。1週間のうち半分くらい呼び出されて話し相手をしたこともあるほどです。
たとえば金融資産が3億円以上あると、利息だけでも最低限の生活費を生み出すことができます。そのため仕事が趣味でもなければ仕事はスタッフに任せ、家事もメイドに任すことができるので時間がたっぷりあります。おもしろいイベントに招かれると「暇つぶしに行ってみようか」ということになるのです。
私も職業柄、資産運用のセミナーで億万長者と出会う機会も度々ありますが、結局はとびきりの富裕層と出会ったのは、いずれも無料セミナーでした。終わった後にあいさつや質問をしてくださりしっかり縁も繋げていて、「さすがだな」と感じました。
日本もこれから、国としても富裕層の優待をしていかなければなりません。そのためには入り口ではお金を取らずにがっつり優待をして、シンガポールのように「気持ちよくお金を払ってもらう」さまざまな工夫をしていく必要があると思います。ぜひ同国の富裕層向けビジネスから学びたいものです。
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