日本には「海老鯛ビジネス」が全然足りない 「お金持ち」が散財したくなる仕組みはあるか

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大きな会社だけではなく、個人経営の小さな会社も、よくパーティを開いて集客するのが上手です。先日、美容サロンのイベントに行ったのですが、参加者限定で10分間の新しい美容サービス体験ができたり、特別価格のパッケージ(回数券)を販売していました。最初にまず値引きの券がもらえ、日本円で4万円相当以上のパッケージサービス商品を買うと、ブーケとプレゼント抽選券ももらえます。こうした「おトクの何重取り」もできるので、結局多くの人が回数券を買うことになり、売り上げは非常に良かったようです。

もちろん、日本でもこうした集客がないわけではありません。たとえば百貨店の化粧品カウンターではメイクアップやエステ体験の無料イベントを行っていることがよくあります。サービス自体は無料ですが、喜んで化粧品をどっさり買って帰る女性も多いようです。

では、なぜイベントをして無料で振る舞うと高い確率で取引が成立するのでしょうか。それは、「返報性の原理」からです。人は何かを施されると、「お返しをしなければならない」という感情がはたらきます。これは『影響力の武器』という本にも詳しく書かれています。シンガポールでは「小さな貸し」で「大きな見返り」を得る商業上の手法が広く利用されているのです。

金持ちは「希少性」にお金を払う

シンガポールでは、「イベント日のみ特別限定販売」「8月中に40万円以上商品を購入した最初の100人には『3日分のF1ペアチケット(10万円相当)』をプレゼント!」といったプロモーションを度々見かけます。

「今この瞬間だけの特別セール」「今だけ限定プレゼント」という特別な理由があると、人は財布を開きやすくなるからです。お金持ちもまた、希少性に弱いのです。

生産個数を限定して高額な値段をつけている高級ブランドも、日本を除くアジア地域での伸びが非常に大きくなっています。値段の高い高級ブランドは誰もが身につけることができるわけではありません。特別な存在として見られたいお金持ちの承認欲求を満たすことができるのです。また、「1サイズ1点しかない」となると、何としても手に入れたいと思う人も出てくるのです。

もちろん、日本でもよく見かける「テレビショッピングでの限定販売」に弱い人も少なくありません。しかし、シンガポールでは、大企業の実店舗でもこのような商売がよく行われるので、本当に驚かされます。また、値幅の落差を売りにするために、定価は高めに設定されています。値段を高めに設定しておいても値段がよくわからないお金持ちが買うことがあるからです。

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