小田急、「新宿-小田原60分切り」苦労の道筋 運転車両部長に直撃取材、GSE開発秘話も

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――GSE車では、EXEαと同様に荷物置場が設けられました。

ロマンスカーもインバウンドのお客様が増加傾向にありますが、大きいスーツケースをお持ちになっていることが多く見られます。荷物棚には載せにくいので、そういうスペースをとるべきだろうということで荷物置場を作りました。そのスペースをとったうえで、GSE車は2階建て車両を組み込んでいたRSE車と同等の400の定員を確保しました、設計サイドは相当苦労しましたが、静穏性や性能面を含めて満足できる車両ができたと思っています。

GSEの荷物置場(撮影:梅谷秀司)

――荷物置場がなければ定員を増やせるのではと思います。

定員を少なくする要素であることは間違いありませんが、その条件のなかでいかに良い居住空間を作り出すか車両担当は苦労しました。それとGSE車ではホームドアの対応を考慮してドア位置を内側に設けたので、車端部のスペースをどうするか難儀しました。前回のMSE車まではホームドアの対応を取り入れていませんでしたが、GSE車は今後のスタンダードになることから設計上考慮したのです。

ホームドアは特急車両との兼ね合いが難しい

――主要駅にホームドアを設置すると発表していますが、VSE車など在来のロマンスカーとホームドア位置が対応できるのか心配になります。

ホームドアを設置すると事故が減るので、早く設置したい反面、特急車両との兼ね合いが難しいところです。GSE車以外の特急車両では、すべてのドアがホームドア位置に合わないわけではなく7~8割程度は合うので、位置の合わないドアをどうするか悩ましいところです。2017年度に愛甲石田駅で実験した昇降バー式ホーム柵のようにホームドアにもいろいろなタイプがあり、ホームドアを具体的にどういう方式にするかは現在検討しているところです。ただ1日乗降人員10万人以上の駅には2022年度までにホームドアを設置する方針です。特急停車駅は基本的にホームドアが設置されることになるので、何かしらの対応をとる方針です。

ロマンスカーLSE(写真:ゴスペル/PIXTA)

――LSE車が7月10日に定期運用を終了しました。VSE車とGSE車のほうが車両性能は高いので、さらなる時間短縮も可能なのでは?

現在のダイヤはLSE車の性能に合わせて引いています。車両性能はVSE車・GSE車が優れているので理論的には可能ですが、ただちにダイヤに反映して時間短縮することは考えていません。私がダイヤ担当をはじめた頃は1分でも早くという時代でしたが、いまは定められた時刻どおりに走ることが速達性と同等以上に重要になっているので、ダイヤにどううまく盛り込むかが大事になります。特急は看板列車なので時間どおりに、しかも目一杯ではなく衝動なく停まってお客様に満足していただくためには、ある程度の余力が必要です。VSE車・GSE車の余力は、そういう面で使っていけばいいのかなと思っています。

――複々線化したのだから、他社で実施している時速120km運転を実施すればと思っている小田急ファンは少なくないと思いますが。

特急車両は最高時速120kmの性能をもたせていますが、現状でも本線を時速110kmで走っている区間は少なく、したがって時速120km出せる区間は限られています。時速120kmに速度向上しても1分程度の短縮と想定されますが、信号設備改修などの投資も必要になってくるので、そこまでの必要性はないと考えています。

福原 俊一 電車発達史研究家

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ふくはら しゅんいち / Shunichi Fukuhara

1953年東京都生まれ。武蔵工業大学工学部経営工学科卒業。東芝子会社を2013年に定年退職後、電車の技術史や変遷を体系立てて調査する車両研究をライフワークとして取り組む。『振子気動車に懸けた男たち』(交通新聞社)など著書多数。

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