小田急、「新宿-小田原60分切り」苦労の道筋

運転車両部長に直撃取材、GSE開発秘話も

GSEの車内(撮影:梅谷秀司)

――まさに複々線化の賜なのですね。

そうは言っても、複々線化できたのは新宿―小田原間82.5kmの中の11.7kmの距離ですから、列車が詰まる区間もあります。全列車が60分を切るのは難しいので、休日ダイヤの3本で59分運転をやろうとジャッジしました。それと箱根湯本までの時間短縮もかねてよりの夢でしたが、小田原―箱根湯本間は単線で増発も時間短縮もできない稠密なダイヤになっていますから、この区間を短縮するのが難儀でした。何とかやりくりして、休日ダイヤの2本を新宿―箱根湯本間73分で設定できました。

――車両性能上フルに走っているというわけではないのですか。

ダイヤ改正初日に新宿―小田原間を59分で運転する初列車がGSE車の初列車でしたが、セレモニーもあったので出発が1分ほど遅れたにもかかわらず小田原は定時到着できました。ダイヤ上はいっぱいの速度で引いているので心配していましたが、運転士に聞いてみると「59分運転のダイヤでも時間に追われている感覚はない、性能に余裕があるので定められたとおりに加減速すればダイヤどおり走れる」というのでホッとしています。

ロマンスカーをめぐる動向

――このダイヤ改正で導入されたGSE車は、VSE車の連接構造を採用しませんでしたね。

これは乗車定員が理由です。箱根湯本駅の有効長の関係で、ロマンスカーの編成長は約140mの制約があり、20m級ボギー車では7両編成、連接車ではVSE車のような10両編成になりますが、連接構造では1車体に1カ所出入り口が必要になりますから、定員を考えると不利です。GSE車はLSE車の代替なので展望席を設ける、編成定員を確保する、さらにはホームドアの対応など諸々の条件を加味してボギー車という判断をしたのです。連接車は曲線追随性など乗り心地面が優れているので、いままでは踏み込めませんでしたが、新技術のフルアクティブサスペンションなどを導入すれば乗り心地面でも遜色ありません、その確信があったので連接構造にこだわる必要もないとジャッジしました。

――GSE車ではVSE車の4人個室「サルーン席」を廃止しました。

GSE車のコンセプトの一つとして、観光輸送と通勤・通学輸送双方に使いたいということがあります。通勤・通学輸送は特急車両をフル稼働させているので、GSE車ではシートにコンセントを設けるなど通勤・通学輸送も意識しています。通勤・通学輸送ではサルーン席は使いにくいので、一般席にして座席定員を増やしたほうがいいという考えで整理しました。

GSE運行開始日(撮影:梅谷秀司)

――VSE車では座席の角度を窓のほうに5度向けていましたが。

VSE車は眺望を意識して窓のほうに5度向けていましたが、構造が複雑になり、座席を向かい合わせにすると「ハの字」になって足がぶつかるというご意見をいただいていました。GSE車は窓を縦方向に300mm広げて通路側の席からでも眺望がよくなったので、シンプルな構造に戻したのです。

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