不妊治療500万円!42歳専業主婦の深い悩み 子供を授かるためにお金はどこまでかける?

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ご相談にいらしたとき、A子さんはすでに専業主婦になっていたので、収入はご主人の給料のみです。手取り月収40万円のうち、不妊治療関連費用で毎月15万円以上の出費がかさんでいます。ほかに毎月15万円程度の住宅ローンの支払いもあります。残りの金額で光熱費、民間の保険料、通信費、その他雑費を支払うと、家計には余裕がありません。

このままでは仮にお子さんを授かったとしても、その後の長きにわたってかかる教育費のことを考えると、決して楽観できる状況ではありません。
 特に今回のように、妻が40代、夫が50代というケースでは、役職定年でお給料が下がったり、親の介護費用が必要になったりと想定外の費用がかかることも考えておく必要があります。

治療前から、あらかじめ「区切り」を考えておく

今後収入が低くなる可能性が高いうえに、教育費、住宅費、老後資金と人生の3大資金が人生の後半に重くのしかかってくるのですから、不妊治療についてもどこで区切りをつけるかを明確にすることが必要です。

A子さんは、東京都から不妊治療の助成を受けていますが、43歳を超えると、助成を受けられなくなります。相談に見えたときには43歳になるまであと3カ月でしたが、今回は相談を受けたことで家計の状況もあきらかになり、43歳で不妊治療に区切りをつけることになりました。結局、43歳まで不妊治療を続けたA子さんですが、治療期間中には残念なことに子どもは授かりませんでした。

ところが、信じられないような本当の話なのですが、治療を辞めて3カ月後に「妊娠しました!」とうれしいご報告をいただきました。

A子さんは、不妊治療期間中、ご主人と治療のことしか話してこなかったことに気がつき、不妊治療をやめてからは、ご主人と映画を観に行ったり、おしゃれなレストランで食事を楽しんだりと、リラックスした時間を過ごすようにしたそうです。それが良かったのかもしれません。

筆者の周りでも、不妊治療を辞めたとたんに子どもを授かるという人が少なくないのですが、もちろん、今までの治療の効果が出たのかもしれません。しかし、個人的には、やはり過度なプレッシャーから解放され、穏やかな時間を過ごすことができたことが妊娠につながったのではないかと思います。

不妊治療はとてもデリケートな問題なので、なかなか割り切れない部分も多いかと思います。しかし泥沼にはまってしまうと、家計だけでなく、夫婦関係の「ダブル破綻」にまで追い込まれてしまいます。

できれば、不妊治療に入る前の冷静な時期に「いつまで行うのか」「いくらまでなら予算をかけることができるのか」など、今後の人生のプランも含めてどこで「区切り」をつけるのかを考えておくことが大切といえます。

高山 一惠 ファイナンシャルプランナー(CFP)

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たかやま かずえ / Kazue Takayama

株式会社Money&You取締役。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、(株)Money&Youの取締役就任。女性のための、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場「FP Cafe」を運営。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評。著書は『やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法』(河出書房新社)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン―ひとりでも生きていける力を身につけよう』(日本法令)など多数。

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