再エネ発電の不安定さは「水素」でカバーせよ 先進地ヨーロッパで活躍する日本の水素技術

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国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が今年1月に発表したレポート「Renewable Power Generation Costs in 2017」によれば、太陽光発電コストは過去7年間で73%も低下し、現在(2017年平均)1kWh当たり10米セント。今後2年以内に3米セントまで下がる可能性があると予測している。天然ガス火力発電コストは6~10米セントなので、これを下回ることは間違いないだろう。風力発電(陸上)は現在でも6米セントで、すでに火力発電を下回っている。

気象条件の異なる日本の発電コストを海外と同列に論ずるのは適当ではないかもしれないが、気象条件以外にも機器代金や工事費などの設備導入費用が割高なことや、がんじがらめの規制・規準など、海外に比べコストアップ要因は少なくない。

政府・民間企業が協働して、少なくとも火力発電並みには引き下げることが必要だ。

水素は再生可能エネルギーを貯蔵する大容量蓄電池

再エネ発電のコストが下がったとしても、水の電気分解で水素を得て、その水素で発電するのでは、エネルギー収支はマイナスだ。そこで、経済価値の低い再エネ発電の余剰電力を活用することが考えられる。

太陽光発電や風力発電は天候に左右され、安定した発電が得られない。このため、電力会社が買い取りを行う際、系統の需給バランスが保てないなど一定の条件下で系統接続をストップする出力制御ルールがある。

この場合、発電側が蓄電池を併設していればよいが、そうでなければ発電した電力が無駄になってしまう。そこで、これを使って水電解すれば、電力コストゼロで水素製造が可能になる。出力制御時だけでなく、通常時でも、出力変動から生ずる余剰電力を活用すれば、発電側・水素製造側の双方にメリットがある。

不安定な再エネ発電の余剰電力を使って水素を製造し、貯蔵・利用するシステムをPower to Gas(P2G)という。貯蔵した水素は、いつでも燃料電池を使って電気として取り出すことができる。

しかし「貯蔵した水素を燃料電池で再び電気に戻すなら、蓄電池のほうが効率がよいのでは?」という疑問が生ずるであろう。

リチウムイオン電池の充放電効率は90~95%だが、水素は、電解効率80%×燃料電池による発電効率55%=44%。コジェネ(熱電併給)方式で熱利用まで加えてもせいぜい70%にしかならない。

だが、たしかに効率だけ見ればそのとおりなのだが、水素貯蔵には大量の電力を長期間貯蔵できるという、既存の蓄電池にはない優位点がある。

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