再エネ発電の不安定さは「水素」でカバーせよ 先進地ヨーロッパで活躍する日本の水素技術

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蓄電池と水素を比べると、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯めるという点は同じだが、蓄電池は変換部分と貯蔵部分が一体となっているので、大容量化にはコストの高い蓄電池をいくつも並べる必要がある。だが水素は、貯蔵部分(ガスタンク)を増設するだけで、簡単にかつ低コストで大容量化できる。

また、蓄電池は自然放電するため、時間の経過とともに蓄電量が減少してしまうが、水素は密閉したタンクであれば自然放出することはないので、長期間貯蔵しても減衰しない。季節や年をまたぐ電力貯蔵も可能だ。

太陽光発電や風力発電を大量導入するためには、大量に発生する余剰電力を季節単位で貯蔵できる、大規模なエネルギー貯蔵システムが必要であり、それには水素電力貯蔵が現実的で有効な技術なのだ。

P2Gは、CO2フリー水素を低コストで作りだすだけでなく、再エネ導入拡大を可能にする「魔法の杖」でもあるのだ。

再エネ先進地域ヨーロッパで活躍する日本の水電解技術

再エネ導入が進む欧州では、総発電量に占める再エネ発電の割合が高まり、余剰電力対策が大きな課題となっている。このため、欧州委員会や国が先頭に立ってP2Gに取り組み、数多くのP2G実証プロジェクトが実施されている。

そして、ここで日本の水電解技術が活躍している。アルカリ水電解装置で世界トップクラスの技術を持つ旭化成は、子会社の旭化成ヨーロッパを通して2つのプロジェクトに参画している。

1つは、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州ヘルテン市の「グリーン水素製造プロジェクト」で、同社の水電解システムが今年5月から運転を開始している。

もう1つは、旭化成ヨーロッパ、三菱日立パワーシステムズヨーロッパを含む、全欧州31の企業・研究機関が参画する「ALIGN-CCUS(Carbon Capture, Utilization & Storage)プロジェクト」だ。火力発電所から排出されるCO2を回収し、再エネ電力で作った水素と反応させ、ディーゼル車や火力発電の燃料となるジメチルエーテルを製造するこのプロジェクトにも、旭化成の水電解システム(実証機)が採用されている。

わが国のP2Gはまだ緒についたばかりだが、今後再エネを拡大するためには、なくてはならないものだ。本場欧州で活躍する水電解システムをはじめ、水素エネルギー貯蔵システム、燃料電池システムなど、P2Gで必要とされる技術は、いずれも日本が得意とする技術だ。

P2G実証を重ね、技術を高め、再エネ発電の大量導入につながることを期待したい。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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