その言葉に感銘を受けたのか、編集者Mが話し出すと、「おい、お前。「ちょー」「まじ」「ヤバイ」の3つは、うちの店では禁止やねん。言葉遣いに気をつけろ!」と一喝される。爽快な突っ込みに笑いをこらえていると、「おい、お前。ニヤニヤすんな!」と、すかさず筆者も怒られた。
「最近は、女性客からよく恋愛相談とかされるな。わてのことを“バツ4”というやつもおるけど、4回も結婚できたからマル4やな」。すかさず編集者Mが、「ママ、ちょーモテる! 私どうしたらいいですかねー」と叫ぶが、「おい、お前。ちょーは禁止や! それから人の話聞け。お前、自分のことしか考えてないだろ。そんなんだからダメなんだ」と喝が飛ぶ。「そもそも人に依存してる時点でアカン。人に振り回されるのではなくて、自分の意思に従って動け」。
今の時代しかってくれる人は貴重
結局、終始説教されていた編集者M。しかし、落ち込むどころか、一つひとつの言葉が身に染みるのか、酔っぱらっているのか、最後は目に涙を浮かべながら「また来ます!」と感動の面持ちであった。
説教風のトークを持ち味に、恋愛相談や人生相談をするママの姿からは、現代人に欠けている“人情味”を垣間見た。置かれているボトルの数を見れば、この店がいかに多くの常連に愛されているかがわかる。今の世の中、真剣にしかってくれる大人は少ない。親しい間柄でも遠慮し合い、親兄弟でも苦言を呈することができなくなった時代だからこそ、IBUKIのような店が求められているのかもしれない。
今回のスナ女訪問は、野毛都橋商店街を舞台に、その街並みを堪能しつつの体験となった。
訪問した2軒のスナックは、それぞれ色合いが異なるものの、どちらのお店にも日常では得られない“やすらぎ”があった。トラディショナル、説教、そして男性専用から女性専用まで。「まき」のママが、横浜に初めてやってきた60年前に比べれば、仕事や恋愛などにおいて女性の選択の幅やチャンスは広がっている。が、自由や自立を手にした反面、ママの時代にあった「標準」という道しるべを失って、ふと迷子の気分になる女性も少なくないのだろう。「まき」にも1人で訪れる女性客は少なくないという。
人情や愛情を求め、都橋商店街をはしごする“徘徊女子”が増えている理由は、訪れてみればきっと誰もが共感できることだろう。
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