人生100年、「学び直し」には本当に効果がある 「経済財政白書」が示す雇用や年収への影響
そこで重要になるのが、ワーク・ライフ・バランスの促進である。平日に育児、自己啓発、趣味、買い物を行っている正社員を対象に、労働時間が1%削減された際に、それぞれの活動を行う時間がどの程度増加するかを推計してみた。平日に自己啓発を行っている正社員の労働時間が1%減少すると、自己啓発を行う時間が0.36%増加するとの結果が得られている。長時間労働を是正するなどの働き方改革の取り組みは、学び直しを促進するうえでも非常に重要な要素であると考えられる。
さらに、費用対効果を高めるとの観点からは、学び直しが企業等から適切に評価されることも重要な要素の1つである。たとえば、大学等で専門的な能力を身に付けても、人事制度が非常に年功的で処遇に変更がない場合、学び直しはコストが高いものとなる。内閣府の企業調査では、学び直しに対して、4割程度の企業が処遇に反映しないと回答していることから、学び直しの成果を適切に処遇に反映させることも重要である。
大学も社会人が求めるカリキュラム編成を
最後に、特に効果の大きいことが確認できた、大学や専門学校等での学び直しの課題について指摘したい。日本は諸外国と比べ、一度就業した後に、大学院等で教育を受け直す習慣の乏しいことが指摘されている。OECD(経済協力開発機構)諸国において、25歳から64歳のうち教育機関で学習をしている人の割合は、日本では2.4%しかなく、OECD平均の11%を大きく下回る形となっている。
この背景には、上記でも見たように、学び直しの時間が取れないことや、人事制度上の課題といった要因のほか、そもそも学び直しに対応した授業科目の開設を行っている大学が少ないことが挙げられる。
また、文部科学省の調査では、社会人と大学等とで、学び直しの際に重視するカリキュラムにズレが見られている。大学等においては、社会のニーズに対応したカリキュラム編成を工夫するなど、社会人が求めるより実践的で質の高い学びの機会を提供することが求められている。
ここでは、「経済財政白書」の一部分を抜粋して解説を行ったが、全体版が内閣府のホームページに公表されているので、興味を持たれた読者には、ぜひご一読いただきたい。
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