年長者が若者に食事をおごるのは大間違いだ もう「粘っこい慣習」はやめたほうがいい

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心のなかで思うだけならまだいいが、「おい、礼ぐらいは言えよな」と感謝を要求してしまう。それを不満に思った若者から文句を言われたり、不機嫌な表情でもされたら、人間関係が悪くなってしまう。

いったいなんのために奢ったのか、なんのために自分が1人で支払ったのかすらわからなくなる。本来の目的から大きく逸脱。まったく本末転倒もいいところだろう。

年長者が若者に奢るのは「自己満足」

礼を要求するぐらいなら、もう二度と誰にも奢らないと心に決めたほうがいい。年長者が若者に奢ることは、実は気遣いでもなんでもないのだ。単なる自己満足にしかすぎないのである。

最近の若い人たちは、年長者のそういったお節介のほうが、かえって重荷なのではあるまいか。上司と部下で呑みに行くと、部下の方から「割り勘にしてくれ」と言うこともあるらしい。

今の若者たちは、恩着せがましい負担を嫌う。気をつかうような相手と飲みに行きたくもないのである。同じ仲間であっても、相手の負担になりたくないから、大仰な贈り物を避けるし電話もしない。常にLINEなどのメッセージングアプリを利用する。贈り物をしてしまえば、相手はお返しに悩んでしまう。電話をすれば、都合の悪いタイミングでも出なければならない。その点、メッセージングアプリで済ませれば、相手の負担にならないのだという。

言われてみれば、こちらも同じような気持ちだ。お中元やお歳暮については、十分に配慮しないと、相手の負担を強いることにもなるのだ。香典もこの頃は「お断り」という場合が多い。つまり香典返しが負担だからだ。

AIだ、IoTだ、シンギュラリティだと言われている今の時代に、もう「粘(ねば)っこい慣習」はやめたほうがいい。むしろ、新しいツールを駆使しながら、今まで以上の豊かで温かい、心のこもった、そして、お互いに負担にならない生活の工夫するほうが大切なのではないか。

とにかく、年上だからと若者に奢ることはもうやめよう。今の若者に、「先輩に奢ってもらおう」というような、あさましい気持ちはない。むしろ、負担なのだ。奢る分だけお節介ということである。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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