北陸新幹線開業前、小松空港は羽田便だけで150万~180万人台の利用があった。JR東日本の会社要覧によれば、首都圏(東京・横浜・八王子・大宮支社管内)と金沢エリア間の鉄路・空路(羽田空港―小松空港・能登空港)のシェアを比較すると、2014年度は「42:58」で空路が優位だった。
しかし、新幹線開業直後の2015年度には、空路の利用者が前年比66%に落ち込む一方、鉄路の利用者は287%に伸び、シェアは「76:24」と一気に逆転した。ただ、単純に鉄道が航空機の利用者を奪ったわけではなく、結果的に金沢地域と首都圏を往来する人の数全体が大幅に伸びた。
羽田便の利用者は何とか100万人台を維持しており、他の地方空港に遜色はない。就航している日本航空、全日本空輸とも、主力機材は、約250~270人乗りのB767から、165~166人乗りのB737-800にシフトしているが、時間帯によってはオーバーブッキングが発生するなど、席を確保しづらい状態だ。全日空は現在も一部の便にB767を投入している。
地元では空路に根強い支持
地元の人々の印象も参考にすると、シェアは大幅に低下したとはいえ、空路が健闘している要因の1つは運賃の安さだろう。実勢価格に当たる特便や特便割引は、一部の便では3日前の購入で、最安が約1万1000円、前日の購入でも1万4000円程度だ。都心―羽田空港―小松空港―金沢駅のルートは、乗り換え2回、最短で3時間弱かかり、東京駅―金沢駅の約2時間半、1万4000円強に比べると必ずしも優位とはいえない。
しかし、座りっぱなしの移動を望まない人、ネットや携帯電話がほとんどつながらない新幹線を好まない人も少なくない。加えて、筆者のように首都圏以外から北陸へ出向く場合は、片道5時間を超える新幹線移動、中でも大宮駅で40分近くに達することがある乗り換え時間を考えると、特に宿泊パックが割安な時期には、どうしても鉄路より空路を選択したくなる。ネットでの予約が比較的スムーズな点も重要だ。
石川県庁に事務局を置く小松空港協議会は、利用回数に応じた空港駐車場の無料券やリムジン乗車券配布、売店・飲食店の割引など「ビジネス利用サポートキャンペーン」を2015年秋に始めた。その成果かどうか、乗客の乗降を見ていると、165人乗りのB737が満席、そのうち40人近くを優先搭乗のステータス会員が占めている便もあった。その大半はクールビズ姿で、ビジネス客を中心とする固定客が羽田便を支えている様子がうかがえた。
金沢市内と小松空港を結ぶリムジンバスは、全盛期のにぎわいが遠ざかったものの、一時は金沢駅止まりだった路線を中心部の香林坊まで延ばし、さらには駅での途中下車・再乗車が可能なチケットを発売するなど工夫を凝らす。小松空港の手荷物受け取り所では、空港スタッフ手作りの「ミニ新聞」が掲示・配布され、空路維持への意気込みが伝わってくる。
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