ホンダ、爆売れジェットで狙う航空業界変革 「生みの親」藤野CEOがこだわった価値観とは

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ホンダジェットの販売は海外で先行していたが、5月に発表した改良機の「ホンダジェット エリート」は日本でも販売する。価格は525万ドル(5億9000万円)。2019年前半の初納入を目指す。2661キロメートルと現行機より17%伸びた航続距離では、羽田・成田から全国の都市、中国の上海や北京までも乗り換えなく飛ぶことができる。しかし、ビジネスジェット機の市場は米国の約2万機に対し、日本では民間機に至っては30機ほどしかない。日本市場をどう開拓するのか。

 

――日本では「ビジネスジェットはお金持ちの乗り物」というイメージがあります。

「ホンダジェット エリート」のキャビン。現行機に比べ、内装の質感を向上させている(写真:ホンダ)

確かに、日本では、ビジネスジェットといえばハリウッドスターが使うようなイメージがあるが、彼らが使うのは70億円ほどする太平洋をひとっ飛びできるような大型の機材。一方、ホンダジェットはもっと実用的な使われ方をする。たとえば、複数都市をまたいで仕事をする中小企業の経営者などがジェットを持っているとビジネスの幅が広がるし、時間も短縮できる。ラグジュアリーなライフスタイルではなく、仕事をする人の生活の質を上げるために役立つ道具だ。「一度乗ってもらえれば、考え方が変わる」という実感がある。

時間短縮におカネを使う価値がある

――どのように訴求をしていきますか。

たとえば、日本から米国東部の都市に行く時に、通常の大型機では乗り継ぎで3時間、下手をすれば遅延でさらに一晩余計に待たされることがある。でもホンダジェットがそこで待っていたら、その心配はない。室内はとても静かで快適に過ごせ、本当に疲れない。それは日本でも同じで、便利さや快適さを一度経験すると、10万円多く出してホンダジェットに乗ることに価値があると考える人が多いと思う。

日本でも問題になっていることだが、仕事ができる人は仕事に忙殺されていて、そういう人が成功したとしても家族と過ごす大切な時間などを買い戻すことはできない。時間を買うことにおカネを使う価値があることに気づいてもらえる。給料を上げるだけでは、生活の質は上がらない。

――ANAホールディングス(HD)とは、ビジネスジェット領域で戦略的な提携を結びました。海外の出張・旅行先でホンダジェットを用いたチャーター便を手配するというものですが、この提携は国内のビジネスジェット市場拡大にどのように貢献しますか。

ホンダは今年3月にビジネスジェット領域でANAホールディングス(HD)との提携を発表した。左はANAHDの片野坂真哉社長。右はホンダ エアクラフト カンパニーの藤野CEO(撮影:大澤 誠)

ANAの人にホンダジェットに乗ってもらう機会があり、普段大型機に乗り慣れている彼らもこんなに揺れないのかとびっくりしていた。エアラインの人が乗って満足する仕上がりだ。それで(ANAHDの)片野坂真哉社長と話が盛り上がり、ビジネスアライアンスを組むことになった。

ANAは法人など大口の顧客をお持ちで、こことアライアンスを組んでおくのは(販売拡大の)第一歩だ。とにかく、まずはジェットを使ってみるというきっかけを作りたい。一般の人たちで買うというところまで行かない人が大勢いる。しかし、使えるというところまで可能性を広げることはできる。

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