フランス人がバカンスと旅行は別と考える訳 バカンスではあえて不便な生活をする傾向も

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また、知人のフランス人夫婦のお気に入りのバカンス先は、フランス中部の山中にある村。徒歩圏内には商店がなく、食料品を購入するのにも車で出かけなければならない。しかし、パリのような都会にはない静けさや美しい自然との触れ合いが魅力のようだ。

旅行を存分に楽しむ、フランス人の家庭もある。幼稚園児と小学生の子どもがいる知人のフランス人夫婦は、家族旅行のほかに夫婦で出かける旅行、妻が友人と出かける旅行、夫が友人と出かける旅行をそれぞれ年1回、企画している。

夫婦そろって留守にするときは、祖父母が孫の世話をしたり、妻が留守にするときは夫が子どもの面倒を見たりしているという。知人の女性が一緒に旅行に出かける友人にも子どもがいるが、夫が休暇を取って子どもの面倒を見たりするのだという。

働く母親が多いフランスでは、普段から祖父母が育児のサポートをし、父親が積極的に育児や家事にかかわっている。みんなで協力して子育てをしているから、母親が旅行に出かけるときも快く送り出せるのだろう。

しっかり休もうという意識が社会に浸透

フランスでは、1936年に人民戦線内閣が年間15日の法定有給休暇の制度を導入した。以後、次第に延長され1956年に年間3週間、1969年に4週間、1982年には現在と同じ5週間になった。内閣府によると、フランスの有給休暇制度では、有給休暇を消化しない従業員に対して、雇用主は強制的に有給休暇を消化させる措置を施さなければならない。しっかり休もうという意識は社会全体に浸透している。

バカンスシーズンが終わる9月、フランスに滞在していたとき、顔なじみの商店の人から「ノルマンディー(フランス東部)にバカンスに行ってきたのよ」などと声をかけられることがあった。休養してリフレッシュしたという顔をして、いつもより機嫌が良い。仕事の能率も上がりそうだ。

働き改革が進む日本だが、年間20日の有給休暇を消化できない人も多いのではないだろうか。丸々20日間休めれば、バカンスと旅行の両方を楽しみ、仕事に対する英気を養うこともできる。健康を保って働き続けるために、きちんと休むという意識を共有することが大切だろう。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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