参院定数6増を巡る国会攻防は「田舎芝居」だ

野党にもメリット、徹底抗戦はポーズだけ

各党のまとめた改正案をみると、定数24減を求める日本維新の会を除けば、そろって「定数維持」が基本だ。大選挙区制を提案した公明党も「埼玉選挙区2増は我が党の議席増につながる」と評価している。一方、自民党を激しく批判する共産党は全国10ブロックの比例代表制を主張しているが、「選挙区での議席増は極めて困難なので、本音では比例代表の定数増は歓迎するはず」(自民幹部)との見方も出ていた。

さらに、立憲民主や国民民主も「結果的に定数増となれば議席増のチャンスも広がる」(国民民主若手)ことも事実だ。しかも、当選者を事実上確定できる拘束名簿式の「特定枠」は「各政党にとって使い勝手がよい」(選挙専門家)のは否定できない。

こうした背景もあって、野党各党は衆院でも「断固反対」を叫びながら、短時間の審議や自民党の採決強行には形式的な抵抗にとどめたとみられる。さらに、「参院で決まったことに衆院が介入する必要はない」(国民民主党)ことも徹底抗戦の意識を薄めさせたとされる。

今回の定数増について、安倍首相は6月の党首討論で「臨時的な措置」と抜本改革でないことを認めている。前回の制度改革となった2015年の改正公選法では、2019年参院選に向けた同法付則で「選挙制度の抜本的な見直しを引き続き検討し、必ず結論を得る」と明記されている。とすれば、今回の改正は「付則にも違反する暫定改正」であることは否定できない。このため参院内部でも「時代錯誤な定数増がまかり通るようなら、改めて参院不要論が強まる」(長老議員)との声も広がる。

元参院自民・脇雅史氏は「ゆゆしき事」と批判

改正案の参院審議の過程で、9日に国民民主党推薦の参考人として見解を述べた元自民党参院幹事長の脇雅史氏は、「選挙制度は国民のためにあるのであって自民党のためにあるのではない」と古巣の自民党の対応を真っ向から批判した。

脇氏は政界引退前には参院選挙制度の抜本改革を強く求めていただけに、「抜本的見直し」を求めた現行法の付則にも触れ「自分たちがつくった法律を守らないのは、ゆゆしき事だ」と与野党双方の姿勢を批判した。

議会での地方代表重視を理由に自民党などが求める「合区解消」には憲法改正が必要だ。野党の立憲民主党も「合区解消」では自民と足並みをそろえている。しかし、来夏の参院選までの衆参両院での改憲発議は「常識的には無理」(自民幹部)なのが実情だ。

となればその参院選で改憲勢力の「3分の2」の維持が必要だが、自民党内でも「3分の2どころか自民の単独過半数も危うい」(選対幹部)との見方が少なくない。このため、「今回の自民党の自分勝手な制度改正に野党も迎合した」(同)ともみえる新制度は、司法や国民が求める参院選挙制度抜本改正への大きな障害になりかねない。

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読売新聞主筆として93歳の今も、社論をまとめる要の役割を果たしている渡邉恒雄氏。安倍首相と定期的に会食するなど、なお政治のキーマンでもある。歴代の首相を知る同氏は現在の政治とメディアをどう見ているのか。本誌編集長がインタビュー。