参院定数6増を巡る国会攻防は「田舎芝居」だ

野党にもメリット、徹底抗戦はポーズだけ

野党側は、一部大手紙が古屋氏の資金管理団体の政治資金規正法違反の疑いを大きく報じたことも問題視して、18日午後の衆院本会議前に大島理森衆院議長に本会議を開かないよう申し入れたが大島氏は拒否。午後3時過ぎからの本会議で改正案の採決が行われて午後4時過ぎに成立した。これにより、来年夏の参院選は「定数248(半数改選124)で比例代表の一部に『特定枠』設置」という新制度で実施される。参院の定数増は1970年以来の異例の事態だ。

本会議採決に先立ち、各党代表による討論が行われたが、反対討論に立った野党各党はそれぞれ「天下の悪法」「権力ボケ」「議会制民主主義の否定」などと激しい言葉で批判したが、討論時間は守り、議事は円滑に進んだ。このため与党側は野党の"口撃"を「単なるアリバイ作り」(自民幹部)と冷笑した。

衆院本会議の採決で自民の船田元氏が造反

この新選挙制度は自民党が「1票の格差是正」の名目で6月6日の選挙制度改革関連の合同会議で決定した。具体的には、①埼玉選挙区定数の2増、②比例代表定数の4増、③比例代表に拘束名簿方式の「特定枠」を設置、という内容。議員1人当たりの有権者が最多の埼玉選挙区の定数を6から8に増やすのは、1票の格差を3倍以内に収めるためで、野党側も受け入れ可能な改正だ。

その一方で、比例代表定数4増には野党各党が一斉に反発した。「衆院や地方議会でも『身を切る改革』で定数減を断行するのが政治の常識」(立憲民主党幹部)で、しかも「比例代表の定数増は1票の格差是正とは関係ない」(同)からだ。

とくに、比例代表への「特定枠」設置は「次回参院選において、合区に伴う自民党のはみだし議員を救済するための策で、党利党略が極まる」(共産党)との厳しい批判が噴出。6日の自民合同会議でも小泉進次郎筆頭副幹事長が「国民の理解を得られるのか」と異議を唱えたが、党執行部側は「来年の参院選での1票の格差是正のためにはこの案しかない。定数6増でも参院創設時の定数250を下回っているので問題ない」と押し切った。

ただし、自民案決定後の各種世論調査でも国民の7割近くが定数増には「反対」の意思表示をしており、自民党内にも「自分勝手な改正には国民が反発し、来年の参院選で厳しいしっぺ返しは必至」との不安の声も広がっていた。

このため、18日の衆院本会議での改正案採決時には自民党ベテラン議員の船田元・衆院議員総会長が採決を棄権した。船田氏は「これまでの選挙制度改革も定数減でやってきた。定数増は認められない」などとして、17日に二階俊博幹事長宛てに衆院議員総会長の辞職願を提出したうえで、造反した。

そもそも、選挙制度の変更は「各党の理解と協力が大前提」で、自民案はそれとはかけ離れた内容だ。与党の公明党までもが国民の反発を懸念して独自の改正案を決め、野党側もそれぞれ改正案をまとめて、相次いで国会に提出した。その中で、公明党は選挙区と比例代表を一本化して全国を11ブロックに分ける大選挙区制を、国民民主党は比例代表の2減分を埼玉選挙区の2増に充てる「2増2減」を提案していた。

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