北朝鮮と米国の交渉は異常事態に陥っている 米国の2つのチームが北朝鮮と別々に交渉
国家安全保障の官僚たちは当然、トランプ大統領が自身で何かするかもしれないと恐れていた。官僚たちの目標は、方針の大まかな声明を得ることだった。主に「CVID」、つまり完全かつ検証可能で不可逆的な核の放棄への明確な取り組みを目的とし、官僚たちが実際の交渉を担うことができるようになる検証に焦点を当てていた。「われわれは、首脳会談の後でプロセスに入っていこうとしている」と、官僚の1人は言う。「トランプには作戦要員や交渉担当になってもらいたくない」。
が、トランプ大統領を抑えようとする努力は、結果的に失敗に終わった。北朝鮮との首脳会談前の協議は、2つの窓口を通していた。より重要な窓口はCIAが用意したもので、CIAの特殊組織「コリア・ミッションセンター」のセンター長であるアンドリュー・ キム氏が担った。
北朝鮮が米朝首脳会談でこだわっていたこと
同氏は、韓国語を話す韓国系米国人で、かつてCIAのソウル局を指揮していた人物だ。ポンペオ国務長官が北朝鮮で金正恩委員長と2回会談し、その後北朝鮮の諜報活動の実力者である金英哲 (キム・ヨンチョル) 副委員長をニューヨーク、そしてホワイトハウスに招いて首脳会談への取り決めを固めるのに使ったのが、この窓口だ。
2回目の一連の協議は、ソウルでの駐韓米大使やオバマ政権での北朝鮮交渉責任者を務めたソン・キム氏が率い、国防総省のランディ・シュライバー氏やNSCのアリソン・フーカー氏を含めた、国務省、国防総省、CIA、NSCの当局者によるチームが行った。彼らが、首脳会談の前に板門店 (パンムンジョン)で北朝鮮の担当者と会い、その後シンガポールに移動して、共同声明を起草していた。
「ポンペオ―CIA」の窓口は、首脳会談の開催場所について金側と合意することに尽力した。北朝鮮の指導者は、最後まで平壌で会談を開催するよう言い張っていた。もう一方の窓口は、実際の内容に充てられていたが、首脳会談を見せ場にしようとするトランプ大統領の姿勢に、いたるところで妨げられた。
ポンペオ国務長官による金正恩委員長との会談は、内容よりもむしろ開催場所と見え方に関する交渉が大半を占めた。スパイ活動の責任者である金英哲氏が米国に来た際、同氏は、北朝鮮との関係を改善する気があるという米国側からの意思表示が必要であると強調。すでに北が宣言したミサイルおよび核兵器実験の一時停止に関する見解と同じくらい、これにこだわっていた。
参加者によると、金委員長は朝鮮半島における戦争状態を終結する宣言を発表することに焦点を当て、それがいわゆる平和体制を作り出すことに向けた第一歩だとした。この希望は韓国政府にも共有されており、4月に朝鮮半島の両指導者が発表した共同宣言の中心的な部分だった。
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