民泊新法、それでも「掟破り」が跋扈する真因 違法行為が放置されれば多方面に悪影響及ぶ
筆者は事前にD氏から送られてきたPDFのマニュアルに書かれた住所に向かい、入室手順に従ってポストから鍵を取り出し、エレベーターで指定された4階へ。鍵を開けて電気を灯すと、リノベーションを施して数年であることがよくわかる、狭いながらも小奇麗な空間が広がる。マンションの管理人は常駐しておらず、ここまで誰とも顔を合わせることはなかった。ちなみに誰かと顔を合わせた場合は話しかけないよう、マニュアルに書かれている。
玄関を入ると、左手には1口コンロ付きキッチン、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、電気ケトル。右手のクローゼットにはアイロンとアイロン台も設置されている。温水洗浄便座付きのトイレは、恰幅の良い外国人には少々厳しそうだが、シャンプーなどを備えたシャワールームもある。室内奥にはソファーとダブルサイズのベッド、ベッドの上のオレンジのクッションがアクセントになっている。狭いながらも機能的にまとめられている印象を受けた。
テーブルの上には東京のガイドブックと1日500MBまで利用できるWi-Fi、アメニティとしてインスタントコーヒー、むき出しの紅茶のティーバッグもあるが、衛生面を考えるといただけない感じはした。造花がいたるところにあり、ルームフレグランスで臭いにも気を遣っているように思えた。タオルやアメニティも完備している。一方で家主不在型の民泊施設であることを示す標識は掲示されていなかった。
その後の筆者の調査によると、物件の広さは19.57平方メートル。ホストは個人名で登録されており、登記簿によればオーナーは中野区の不動産会社だった。賃貸として物件を借りたうえで、又貸ししていることになる。
民泊物件として使用されていることを告げると…
オーナーの不動産会社に、所有する物件が民泊物件として使用されていることを告げると、「知らなかった。もしそうであれば契約違反であり、解約の対象となる。契約者が居住することを前提に保証会社とも契約しており、事業用であれば別。本人に確認する」と話し、困惑気味だ。
新宿区健康部衛生課によると、物件の住所や所有者がわかる場合、電話や書面などで違法営業をやめるように指導し、度重なる指導でも改善の兆しがない場合には刑事告発するという。
一方で、エアビーなどの仲介サイトを指導する権限はないため、掲載を止めることができないとして、電話で対応した新宿区の担当者は、観光庁の窓口にも情報提供するよう筆者に話すのみだった。担当者はこのほかにも違法物件が掲載され続けていることを把握していると話したものの、物件数についてはコメントを避けた。事実上野放しということになる。ちなみに、無届、無許可営業は旅館業法違反として罰則の対象となり、6カ月以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。
エアビーの公共政策担当報道窓口によると、「エアビーとして健全な民泊の普及を目指す。間違った、異なる許可番号の物件は受け入れられないが、掲載数が多いため対応できない」という。確認したものを掲載すれば問題は解消するのではないかと思うが、「自治体によっては許可番号を公表するまでにタイムラグがあり、事業者として確認するのは厳しい。関係各所とシステム上の連携をして、登録と同時に確認できるシステムを構築するなど対策していきたい」(同)といい、抜本的な対策には時間がかかりそうだ。
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