ホンダ「N-VAN」軽商用車に新風吹き込めるか 地味な軽バンから脱却、ホビーユースも開拓

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また軽自動車のキャンピングカー(軽キャンパー)市場においても、N-VANは注目を集めている。架装メーカーのホワイトハウス(愛知県)の酒井裕二郎氏によると、これまで軽キャンパーは、ベースとなる車種がこれといってなかったという。

ハイゼットベースの軽キャンパー(写真:キャンプライターの森風美氏)

そこに登場したN-VANは「低床の箱形で加工がしやすい。乗用車としての性能も高いため、ベース車として最適だ」(酒井氏)。「一般的なキャンピングカーのベース車であるハイエースのような存在になるだろう。お客様にもさまざまな提案ができそうだ」(同)と期待が大きい。キャンプライターの森風美氏も、「車中泊ではフルフラットだと眠りの深さが違う。N-VANはバモス以上のフルフラットと聞いて気になっている」と話す。

低迷するシェア拡大の起爆剤になるか

通常、軽商用車のモデルサイクルは8~10年と、乗用車と比べても長めだが、1999年にアクティを発売してから、途中派生車種のバモスは出たものの、軽商用車発売は19年ぶりとなる。なぜここまでブランクが空いたのか。ある業界関係者によると、2011年のNシリーズのヒットや東日本大震災、排ガス規制への対応などで、開発が後ろ倒しになり、19年間経ってしまったという。

ホンダの日本事業を統括する寺谷公良執行役員(左)と「N-VAN」開発責任者の古館茂氏(撮影:大澤 誠)

ホンダは今回、20年近く手をつけてこなかった軽商用車市場に、満を持して人気のNシリーズで新型車種を送り込んだ。ホビーカーのバモスと、商用のアクティバンを生産終了させるにあたり、N-BOXをベースにバンの新たなイメージを作り上げるために、思い切った開発ができたのだ。

また、アクティとバモスは八千代工業に製造を委託していたが、N-VANはN-BOXと同じく三重県の鈴鹿製作所で生産するため、車種を集約し稼働率の向上にも貢献できる。寺谷執行役員は「収益性でいうと商用車は、オプションがつきやすいN-BOXより厳しい」とも述べるが、クルマを使ったレジャーの提案をし、新市場を生み出そうとする試みは目新しい。

付加価値をつけ、その分を価格に転嫁するやり方はN-BOXの時と同じだが、今回もその魅力を顧客に伝えることができるのか。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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