金正恩の実兄「正哲」は一体何をしているのか ギターを弾きながら平壌でひっそり生活?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ロンドンで移動用に使った車の中で、よく歌を歌った。

「マイウェイ」という題名だった。歌詞は暗記しているようで、歌いながら正哲は涙を流しているように見えた。太永浩は、金ファミリーでは正恩の実兄でありながら、権力の中枢から外され、音楽に入れ込む正哲の微妙な立場が思い当たった。太永浩は「憐憫の情を抱いた」と回想している。

いよいよ、午後6時にコンサート会場に入った正哲は入口で売られていたTシャツ、カップ、キーホルダー、アルバムなどクラプトン・グッズを買いあさった。ところが正哲の入国を知った西側メディアが、物陰から一行の様子を撮影していた。

正哲は公演に心底陶酔した様子だった。席から立って、熱狂的に拍手し、拳を振り上げる仕草も見せた。公演を終えてホテルに戻った正哲は、興奮がさめやらず、「一緒に酒を飲もう」と言いだした。これは命令だった。随行員たちは、部屋の冷蔵庫にあったビールを持ち寄って、乾杯した。金ファミリーは酒に深い縁がある。金正日も酒浸りの日々を過ごし、晩年に体を壊した。金正恩も酒が好きだとされている。

ところがまた困ったことが起きていた。

正哲が公演を見に来た映像をテレビ局が撮影し、放送したのだ。日本のテレビ局だった。酒を飲んでいた最中に緊急の報告を受けた太永浩は、インターネットを通じて映像を確認し、緊張した。しかし、本国からの特別な指令はなかった。

百貨店に行って子ども服を購入

そのため、翌21日も予定どおり、行動した。ロンドンから遠く離れた楽器街に行き、正哲のお目当てのギターをようやく購入した。2400ユーロ(約31万円)もした。この荒い金使いは、金ファミリーだからこそできるのだろう。

その後、正哲は百貨店に行き、子ども服を買った。「ここまで来て、子どもの服も買わなければ悪いパパと言われるからね」。

どうやら結婚して子どもがいるようだった。この本には書かれていないが、正哲の妻は、北朝鮮の有名なモランボン楽団でギターを演奏しているカン・ピョンヒという女性だとされている。子どもは男の子だという。

次ページ22日も公演を見に行った
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事