金正恩の実兄「正哲」は一体何をしているのか ギターを弾きながら平壌でひっそり生活?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

公演2カ月前に、クラプトンのチケットを極秘に購入せよとの電子メール指令が本国から太のもとに届いた。メールは暗号化され、「家族にも絶対に話してはならない」と念が押されていた。

太永浩が、ロンドンに正哲が来ることを知ったのは、この時だった。太はすでにクラプトンを北朝鮮に呼ぶため、交渉をしていた。わざわざロンドンまで来て、クラプトンの公演を見ることができる人間は、正哲1人しかいなかった。

苦労して公演会場の正面と脇の2カ所を購入した。正哲が突然、違う場所から見たいと言いだした場合の対策だった。

正哲がロンドンに来ると、さっそく予想外のことが起きた。5月19日の夜10時近い時間に空港に到着した正哲は、ロンドンのオックスフォード通りのレコード店、HMV(英国最大のエンターテインメント・チェーン店)に行きたいと言いだしたのだ。「飛行機に乗っているあいだ中、ロンドンでレコードを買いたいと思っていた。今から行きたい」。

個室がついたスイートルーム

太永浩が「もうどこも閉店しており、無理です」と説明しても、「電話するか、シャッターを叩くなりして店を開けてもらえないか。外交官が頼めば何とかなるのではないか。そのくらいの人脈もないのか」と言って聞かなかったという。

北朝鮮でも、こういった気まぐれな生活をしていたのだろう。

結局、その夜はホテルに入った。宿泊したのは高級ホテルのサボイだった。テムズ川が見える側で、しかも個室がついたスイートルームという条件で、1泊2000ユーロ(約26万円)以上した(イギリスの通貨はポンドだが本ではユーロ表記)。

個室ありを希望したのは、そこに随行員が待機し、正哲が何か欲しがった時には、すぐに対応できるようにという配慮だった。2000ユーロは、当時の太永浩公使の2カ月分の給料に相当したという。

次ページ明日までにズボンを洗濯せよ
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事