夜行列車が欧州で「絶滅」せず走り続ける理由 LCCやバスの客がシフト、運行拡大へ署名も

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ナイトジェットの運行拡大区間のうち、現地で最も注目されているのはベルリンとウィーン間の列車だ。この列車はCNL撤退と同時に消えたが、1年余りで復活を果たすことになる。

運行ルートは従来のドレスデン、プラハ経由ではなく、ベルリンから一旦東に向かってポーランドに入り、同国西部ジェロナ・グラ(Zielona Góra)、南西部ウロツワフ(Wroclaw)、そしてチェコ南部をかすめてウィーンに入る。

この列車の運行開始と同時にベルリン―ブダペスト間、ベルリン―クラクフ間の2路線も開設される見込みだ。詳しいダイヤはまだ発表されていないが、これら3つの目的地への列車は、ベルリンからは1本の列車として出発し、途中で切り離して目的地に向かうことになるのだろう。

また、ポーランド経由のベルリンーウィーン間夜行列車の登場で、ウクライナからの接続が大幅に改善されると期待されている。

夜行列車網強化へ署名運動も

こうした中、北欧では新たな運動も巻き起こっている。「北欧とドイツ、オランダなどへの夜行列車網をより強化してほしい」という署名運動が現地の若者たちの間で進んでいるのだ。

署名を集めているのは主にスウェーデンとデンマークの若者からなる「バック・オン・トラック(Back on Track)」というグループで「大量の乗客を低コストで運べる夜行列車は、温室効果ガス(二酸化炭素)削減にも貢献する」と訴える。これは、スピード競争や所要時間の短縮だけが必ずしも鉄道の向かう道ではないことを示している好例と言える動きではないだろうか。

欧州ではかねて、昼行列車でもスピード競争ではなく、リーズナブルな料金による顧客本位の運行を目指す動きが顕著だ。今後、夜行バスやLCCで「旅の楽しみ」を覚えた若者たちが、「より快適で安全な夜行列車」へとシフトする傾向は進んでいくことだろう。

こうした若者たちへの「夜行列車という選択オプション」という受け皿を残せている欧州の状況を見るにつけ、夜行を廃止して高速化一辺倒の道へ進む日本の現状に幾らかの疑問を感じずにはいられない。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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