「ファミコンブーム」にあれほど熱中した背景 ゲーム界の伝説、高橋名人が今だから語る

拡大
縮小

ファミコンに移植するときに、「ほかのゲームと同じように、1画面で全部わかるのはキャラが小さすぎて面白くないから、キャラクターをマリオぐらいの大きさにしたほうがいいのではないか?」という話になりました。でもそうすると、どうしても画面が狭くなっちゃうので、ステージ全体を表示させるためには、スクロールさせなければなりません。

それを『ロードランナー』の開発元に説明しにいったら、「これは『ロードランナー』じゃない」と最初は反対されました。しかし、「ファミコンというテレビゲームは子ども向けのゲーム機だから、こういうアクション性が入ったほうが絶対に面白いですよね」というふうに説得して、発売できるようになったんです。

それにより、『ロードランナー』はパズルゲームですが、スクロールすることによって、アクションゲーム要素も強くなりました。

『ロードランナー』は、100万本を越える販売本数になりました。それまでのハドソンの年間売り上げをこの1本で超えてしまったのです。

「裏技」という言葉はなぜ生まれたのか

『ロードランナー』は、「裏技」という言葉が生まれるきっかけになったタイトルでもあります。

きっかけは『ロードランナー』で、「はしごに右手をかけて止まっているときにロボットがすり抜ける」というバグが見つかってしまったときのことです。

これがパソコンのプログラムであれば、バグがあったとしても雑誌に「リストの何行目のここをこう修正してください」と掲載すれば修正できたのですが、ファミコンはそれができません。

「これが返品問題になると倒産だな。どうしよう」と考えていたときに、『コロコロコミック』側から「これ本当の技じゃないけれど、やってみたら面白い技ということで、逆に言っちゃってもいいんじゃないですか?」と提案されたのです。

「それも面白いかもしれないな、じゃあどうしよう? 表に対して裏技というのでいいんじゃないの?」というのが、そのときの会話で出てきたんです。

ネット上では「裏技」は、私が考えたという話もありますが、実際は『コロコロ』さんとの話し合いのなかで生まれた言葉なのです。

そのあとに、隠しキャラクターなどを入れる文化が定着しました。

当時、メーカーはファミコンのゲームを年間に5本までしか出せない。それもトップのメーカーの話。それ以外のメーカーは3本だったのです。

次ページ裏技文化が浸透した背景
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT