日産でまた不正発覚、露呈した甘い規範意識 国内19車種で燃費や排ガスデータを改ざん

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さらに深刻なのは、その間にSUBARUで同様の事例が明るみになったにもかかわらず、日産社内で問題が顕在化するまで半年も時間を要したことだ。スバルで昨年10月に無資格者による完成検査問題が、昨年12月以降には燃費と排気ガスのデータ改ざんが明るみになった。これを機に日産は燃費と排気ガスに関しても調査を開始し、測定に使用された機械のデータを精査することなどにより不正が判明した。

その間、日産の従業員から不正を告発するなどの動きはなく、自浄能力の低さが浮き彫りになったといえる。スバルの不正がなければ、問題が白日の下にさらされることはなかったのではないか。その点について、山内CCOは「起こりうる問題について優先順位をつけてリスク評価をしていたが、その評価の対象になっていなかった」と述べ、調査が追いついていなかったことを暗に認めた。

国内販売への影響は不可避か

相次ぐ不祥事の発覚によって懸念されるのが、イメージダウンによる国内販売への影響だ。無資格検査問題では工場の生産ラインが停止し、車両の登録ができなくなったことなども影響して、昨年10月の日産車の販売台数は前年比で4割超減少した。現在では生産は正常化し販売も前年並みにまでようやく回復してきた。

エンジンで発電してモーターで駆動する日産の「ノートe-POWER」。今回の不正発覚で好調な販売に水を差されかねない(撮影:尾形文繁)

そして、売れ筋のノートが「e-POWER」の搭載をテコに2018年上半期の国内新車販売で首位を獲得した。日産車として48年ぶりの快挙だ。ミニバン「セレナ」も登録車販売で上位に食い込み、「国内販売は苦しんできたが、やっと売れる車種が出てきた」(日産ディーラー)。明るい兆しが見えてきた矢先の不正発覚に、国内販売への悪影響は避けられそうにもない。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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