東京都が取り組む「時差Biz」は疑問だらけだ 多額の宣伝費投じたが効果の検証ほぼなし

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昨年の効果を振り返ってみると、取り組みの規模に対して大変限定的な効果であったように思える。もっとも、参加企業が東京都の中にある約320社しかないというところからも限定的な効果にならざるをえないのは仕方ないことではあるが、そうした意欲的な企業の中でも参加者の満足度は必ずしも高いとは言えないのではないだろうか。

むしろ、この取り組みは企業が「働き方改革をしている」というPRのために使われているのではないかと思える。

時差Bizのホームページにあるレポートを見ると、「時差Bizによって得られたもの」という設問(複数回答)では上位に「ホームページに社名が掲載され自社PRにつながった」41%、「働き方改革宣言などと一緒に取組めた」36%となっており、「社員からへの参加取組への評価があった」は31%となっている。人事制度や働き方の変化への貢献を感じた企業は20%台とさらに少ない。

「働き方改革」であるならば、社員からの評価や人事制度の充実というものが実感した効果として上位に来てしかるべきだと思うが、アンケート結果ではそういった取り組みにはつながっていないことがわかる。これでは時差Bizそのものに効果があるのかはっきりしないと企業側から言われているようなものではないだろうか。

五輪に向けた混雑対策の一面

東急田園都市線の臨時列車「時差Bizライナー」を待つ人々(編集部撮影)

しかし、こうした状況の中でも参加企業を増やそうとしているのにはワケがある。それは東京オリンピック・パラリンピック開催中の混雑対策だ。中央大学の田口東教授のシミュレーションによれば、オリンピック・パラリンピック開催中、朝のラッシュ時には乗車率200%を超える電車が1.5倍に増え、東京や新宿などの大規模駅は最大20%程度利用者が増えるという。

各鉄道会社がピーク時に合わせて運行設備の設計や列車の運行本数などを設定していることを考えると、朝ラッシュ時にオリンピック・パラリンピックの観戦客が移動する分が加わるだけで駅の混乱や列車のひどい遅延が起こりかねない。小池都知事も、今年の時差Biz期間発表にあたり「五輪に向けたTDM(交通需要マネジメント)としても取り組む」とコメントしており、都としても「オリンピックの混雑問題」が喫緊の問題として認識されているのだ。

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