東京都が取り組む「時差Biz」は疑問だらけだ 多額の宣伝費投じたが効果の検証ほぼなし

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では、昨年の時差Bizはどのような成果があったのだろうか。時差Bizを担当する東京都都市整備局は「認知度は70%と高い。また参加した人へのアンケートでは6割が『やってよかった』と効果を実感した。ほかにも東京都が言ってくれたから時差通勤を実施できるようになったという声も寄せられている」と、その成果を説明する。ほかにも時差Biz参加企業の多いエリアにある16駅で自動改札機のデータを分析したところ、朝ラッシュピーク時には利用客が平均2.3%減少したという。

各鉄道会社で混雑の「見える化」が進む(提供:東京急行電鉄)

筆者も昨年、田園都市線の時差Bizライナーに乗車してみた。確かに朝ラッシュの激しい混雑時よりは楽に乗車することができたし、なによりも止まらずに溝の口駅から渋谷駅へ向かっていくことが楽さを感じさせてくれたように思う。また、かなり周知も行っていたことで、狙って乗る人も一定数いた。東急電鉄広報によれば、昨年の時差Bizライナーの乗車率は108%。同時間帯の列車の乗車率は70%~90%ということで、1本の列車のこととはいえ効果はあったようだ。

また、意外な効果を指摘する専門家もいる。「時差Bizで乗車率が下がったというよりも、関連して鉄道各社が列車別の混雑の情報公開を駅貼りポスター等で行うようになったことが大きいと思う。この取り組みで列車1本ごとの情報まで見える化が進んだことは乗客にとってもすいている列車を選べるという意味で大きなことではないか」という。

「朝を有効活用できた」は4割以下

では、時差Bizの参加者は具体的にどういう感想を持ったのだろうか。時差Bizホームページの実地レポートを見ると、意外な点が見えてきた。

まず、「通勤時の快適性は変化したか」というアンケートの項目(単数回答)では「非常に上がった」が24.6%、「少し上がった」が33.4%、「変化なし」が33.4%だった。約6割の人は効果を感じたと言える。

しかし、「時差Biz参加によって得られたこと」という項目(複数回答)では「朝の時間を有効活用できた」と答えたのは38.2%にとどまる。また「働き方を改めて考えるきっかけとなった」という人は37.2%だった。

また、「時差Biz期間中に出勤した時間帯の混雑状況」という項目(単数回答)で「普段より空いていた」と答えた人が過半数となったのは、7時30分までに出社した人か、9時31分から11時00分に出社した人だった。9時出社の企業の場合、1時間半以上早く出勤しないと効果を感じにくいと言えよう。

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