東京都が取り組む「時差Biz」は疑問だらけだ 多額の宣伝費投じたが効果の検証ほぼなし
時差Bizは小池都知事が環境相時代に行った「クールビズ」のように、横並びで始めることで一気に推し進めて効果を出し、皆で社会問題を解決しようという施策だ。しかし、時差Bizの場合は鉄道会社もできることが限定的なうえ、クールビズのように「個人が簡単な取り組みをすることで社会問題を解決する」という方向のものではない。
また、時差Bizでは通勤時間をずらすとしても早い時間にずらすことが多く、早起きが得意な人はいいが、先ほど述べたように普段より1時間以上も早く出勤しないと効果が得にくいとあってはなかなか「参加しやすい」とは感じにくいだろう。
昨年の時差Bizに関して言えば、東京都の職員が参加した実績がまったくわからないことは取り組みを主導する立場としていささか不誠実に感じる。同じような取り組みでは、昨年11月に神奈川県川崎市で市職員を対象に行った時差通勤の実験的取り組みの場合、対象となる職員の数・日別の取り組んだ職員の数・時差通勤をしなかった日の理由などしっかりアンケートをとって発表している。こうして自ら実験的取り組みを行うことで成果をデータやアンケート結果で見せていくことがまず必要なのではないだろうか。
また、昨年度の時差Bizによって出た混雑緩和の具体的なデータ検証がほとんど行われていない点にも疑問が残る。昨年度行われた時差Bizのデータ検証は先述した一部の駅の改札機の通過データ検証と東急電鉄の「時差Bizライナー」の乗車率のデータ検証くらいで、ほとんど行われていないといってよい。参加者に限られたアンケートでの効果測定だけでは偏りが心配され、本当の意味でどれだけの効果があったのかわからない。
効果の検証をはっきりと
今年度はぜひ、もっと大々的に乗車率測定などを行い、首都圏の電車通勤の様子がどれだけ変わったのか、効果測定をしてPRしてほしい。満員電車が好きな人はそういない。少しでもすいた列車に乗れるとわかれば、時差Bizに取り組もうという動機づけにもなるはずだ。
東京都都市整備局によれば、今年度の時差Biz関連予算の多くは取り組みをPRするために使うという。しかし、このままでは働き方改革につながらず、混雑緩和の検証も行われず、音頭をとっている役所も取り組みに参加しているのか実態がわからない。そんな活動に税金を投入する価値はないと思われても仕方ないのではないか。
繰り返しになるが、満員電車が好きな人はそういないはずだ。そして、企業も労働者の生産性を高めたいと思っているだろう。企業の参加を促し、働き方改革を成功させるためには、周知よりも時差Bizの結果をより多面的に検証し、データを示すことこそが重要ではないだろうか。
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