試運転用「N700S」は営業運転に使わないのか 現行「N700系」には客を乗せない編成がある

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2002年には愛知県に小牧研究施設を開設。この施設には新技術の研究・開発やシミュレーション・実験設備を備えており、技術開発のテンポが速くなった。そしてこの新技術を実走試験する役割を果たしたのが300系J1編成だった。

N700系Z0編成。現在はX0編成として試験運行を行う(写真:JR東海)

J1編成で試験された主な技術はデジタルATC、全周ホロ、車体傾斜装置、下枠短縮型シングルアームパンタグラフなど。これらはN700系用に開発されたものだ。小牧研究施設とJ1編成の研究・開発の成果を活かし、2005年にN700系量産先行試作車Z0編成が登場した。

N700系量産先行試作車Z0編成は、他の試作車・量産先行試作車と同じように基本性能試験、速度向上試験を実施した後、約1年半にわたる長期耐久試験を行った。N700系の量産車は2007年に登場しているが、量産先行試作車と比べて目立つ変化は喫煙ルームの設置程度と相違点が少なくなっている。これも小牧研究施設と試験専用編成の成果だと考えられる。

しかし、N700系の量産車が登場した後も量産先行試作車Z0編成は量産化改造されず、営業運転には投入されなかった。つまりZ0編成が試験研究専用編成の第1号だと見ることができる。なお、Z0編成と交代して300系J1編成は引退した。

Z0編成は中央締結ブレーキなどの新技術の走行試験を実施。これらの新技術はN700Aで採用されている。Z0編成も2014年にN700Aタイプに改造し、X0編成と改めて引き続き試験走行を行った。このX0編成の試験走行の成果が反映されたのがN700Sとなる。

N700S確認試験車J0編成は実質的にN700系X0編成の後継車となる。現在はJ0編成とX0編成を同時に使用した試験も行っているが、X0編成は経年13年を迎えることもあり、おそらく近いうちに引退するだろう。

新技術の走行試験はすでに始まっている

一方J0編成の新技術の走行試験はすでに始まっており、6月から次期軌道状態監視システムを搭載して走行試験を開始することを発表している。軌道状態監視システムは営業列車に搭載して、走行中に軌道の状態を計測して、データをリアルタイムに中央指令等へ送信するシステムだ。

このシステムはN700に搭載しているものを進化させたもの。現行システムはレールの上下方向のずれのみを計測していたが、次期システムは上下方向に加えて左右方向のずれと、左右レール間の距離、高低差を計測することができる。

N700Sの量産車は2020年度から導入されることが予定されているが、N700Aの事例を見ると2020年代中盤にはN700Sの進化型が登場し、2030年代前半にはN700Sの後継車が登場する可能性が高い。非常に開発サイクルが短い中でJ0編成の開発試験は絶え間なく続けられることだろう。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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