試運転用「N700S」は営業運転に使わないのか 現行「N700系」には客を乗せない編成がある
また、10月には8両編成での走行試験を予定している。N700Sは4両を1ユニットとして8両、12両、16両編成の編成展開が容易な標準車両としており、国内外の要望に合わせた車両の提供を考慮している。
N700Sの詳細な開発プログラムは公表されていないので、一般的な新幹線電車の開発プログラムに照らし合わせて考えると、基本性能試験の結果を反映させてN700S量産車の最終仕様を決定し、2020年度のデビューへ向けて設計・製造が始まると思われる。
走行試験は3年間実施される予定
J0編成の走行試験はこれで終わるわけではなく、続いて長期耐久試験に移行する。これは部品などの耐久性を確認するためのもので、新幹線電車では1年半かけて45万km走り込む。なお、台車については60万km走行して耐久性を確認する。そのため量産車が登場した後も耐久試験は続くのが通例で、J0編成の走行試験も概ね3年間実施される予定と発表されている。
JR東海ではJ0編成の走行試験終了後も、試験研究専用編成として活用すると発表している。つまりこの編成は営業運転に使用されることはない。営業可能な設備を備えた16両編成の新幹線を非営業車両として保有しているのはJR東海だけだ。
かつて、新幹線電車では新技術開発のための試験専用編成である高速試験電車を試作することが多かった。予算を抑えつつ、効果的な結果を得るため、編成は6~8両と短く、その一方で最先端の技術を盛り込んだ。また、1990年代は速度記録に意欲的に挑戦していた。
しかし、最先端技術はコストに見合わず、営業車両に反映されないケースも多い。また信頼性・冗長性の面から営業車両に採用しないケースも多く、高速試験電車は「走る実験室」の意味合いが強かった。
一方営業列車用の技術の試験は、営業運転の状態に近いため精度の高いデータを取得することができるのは確かだが、営業用編成を改造して実施するのが一般的。そんななかJR東海は営業車両と同一条件の試験専用編成を所有しているというわけだ。なんとも贅沢な話だが、JR東海にとってこの開発体制は長い実績がある。
試験専用編成の第1号は300系9000番代試作車J1編成(登場時はJ0編成)。J1編成は300系量産車が登場した後、量産化改造され営業運転に導入されたが、2000年に営業運転から離脱した。そして試験専用編成へ転用された。
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