危機に瀕する自治体病院、リストラ迫る総務省、利害対立で再建計画の頓挫続出

拡大
縮小

累積赤字は1・9兆円 経営改善は急務

病院の集約が持ち上がっているのは舞鶴市だけではない。

全国に自治体病院は1018施設あり(08年1月末現在)、全病院数の11%、病床数では15%弱を占める。救急医療、僻地医療で重要な役割を果たしてきたが、経営状況は極めて厳しい。8割の自治体病院が累積赤字を抱え、総額は1兆8736億円に達している(06年度末)。

06年6月に夕張市が財政破綻したのを機に、自治体病院を取り巻く環境はさらに厳しくなった。07年6月自治体財政の破綻防止をうたう自治体財政健全化法が成立し、病院や下水道など地方公営事業の赤字や過剰債務が白日の下にさらされるようになった。

自治体は「実質公債費比率」など四つの健全化指標の公開を義務づけられ、4指標のうち一つでも基準を超えればイエローカードに例えられる「早期健全化団体」になる。さらに数値が悪い場合にはレッドカードの「再生団体」となり、その場合は国の監視下で、徹底した人員整理や給与削減を迫られる。当然、自治体病院も縮小の対象となる。これまで「政策的経費」として黙認されてきた自治体病院の赤字が許されなくなったのだ。

自治体病院に再編をうながす新たな動きも出てきた。07年12月、総務省自治財政局が打ち出した「公立病院改革ガイドライン」がそれだ。

同ガイドラインのポイントは三つある。一つ目は経営効率化。二つ目は再編・ネットワーク化。医師を集約することで地域医療を立て直すという考え方に基づく。そして三つ目は経営形態の見直しだ。

具体例として示されたメニューには、自治体病院の責任者は首長が務めるが、事業管理者を設置して独立した権限を持たせる地方公営企業法の全部適用という仕組みや、運営管理を民間などに委託する指定管理者制度、地方公共団体が法人を設立する地方独立行政法人化、民間への事業譲渡とさまざまな種類がある。

だが、現実にはうまくいっていない。再編・統合の例として高知県内では、日本で初めてのPFI方式による病院の統合と施設の建て替えが行われた。高知県立中央病院(400床)と高知市立市民病院(366床)が統合して、高知医療センター(648床)が新築、開院した。

PFI方式とは、建物の建設や維持管理、運営などに民間の資金や経営能力を活用する手法だ。経営の効率化や業務の質の向上を目的に、オリックスを中心とする特定目的会社との間で30年間、約2130億円の事業費での運営委託契約を結んだ。しかし3年目の07年度は59億円の累積赤字を計上。そればかりか、病院の立ち上げを担っていた前病院長が、オリックス子会社社員からの収賄容疑で逮捕されるという事件に発展した。

病院合併の際に医師が去るケースもある。07年の岩手県立釜石病院(272床)と釜石市民病院(250床)の統合がそれだ。大学医局の系列が違うこともあって、吸収される市民病院の医師全員が去った。

再編に行き着く前に計画が撤回される例も出ている。千葉県内では国保成東病院、県立東金病院、国保大網病院を集約して新築移転が計画されたものの、センター長の権限をめぐって対立が生じ、白紙撤回になった。

地域医療を取り巻く要因は複雑に絡み合い、病院の集約は容易ではない。行き着く先が見えぬまま、自治体病院の混迷は深まるばかりだ。

(週刊東洋経済)

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