「トラック界のテスラ」が放つFC車が凄すぎる 航続距離1900キロ、費用はディーゼル車並み

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ディーゼル車より2~3倍高いが、NIKOLA ONEのリース料には水素燃料費と定期メンテナンス費用も含まれるので、走行距離によっては総コストがディーゼル車より割安になる。

水素ステーションを米国全土に自力で整備

性能や経済性でディーゼル車に引けをとらないとしても、最大の心配は燃料の水素を補給する水素ステーションが十分に整備されているかだ。

米国で現在運用中の商用水素ステーションは、40カ所程度しかない。しかもその大部分はカリフォルニア州にある。これではいくら航続距離が1200マイルといっても、カリフォルニア州以外は走れない。

だが、ニコラが凄いのは、ニコラトラックが全国を走り回るのに必要な水素ステーションネットワークを自力で整備すると公約していることだ。NIKOLA ONEの販売が始まる2020年頃までに364カ所、その後2028年までに合計700カ所の水素ステーションを設置する計画だという。各ステーションはオンサイト型(ステーション内で水素を製造)で、水電解により水素を製造する。将来的には再エネ電力のみを使い、販売する水素はすべてCO2フリー水素とする方針も明らかにしている。

ニコラによれば、水素ステーションの新設コストは1カ所当たり1000万ドルかかる。364カ所では投資額は36.4億ドル(約4000億円)にも上る。本当に364カ所もできるのか? にわかには信じがたいような話だが、これまでのところ水素ステーション整備に向けた準備は着々と進んでいる。

ニコラは、ノルウェーの水電解装置メーカーNel ASA社を水素ステーション関連機器のソールサプライヤーに指名し、昨年秋16カ所分の機器を発注。今年初めから順次建設に着手している。今年春には、14カ所分(これは前述アンハイザー・ブッシュ社の輸送ルートに建設する分)を追加発注、さらについ先月(6月)末、水電解装置448台と関連機器合わせて数十億ノルウェークローネ(1クローネは約14円)規模の発注を行った。

ニコラの水素ステーションは、ニコラ車以外の一般車両にも水素を販売する。

現時点で販売価格が決まっているわけではないが、ニコラのホームページには水素ステーションの料金表のイラストが載っている。そこには、価格がニコラ車向け0.00ドル、一般車向け3.50ドルと表示されている。この価格なら、日本の水素ステーション(販売価格は1000~1100円/kg)の半値以下だ。ガソリン代の安い米国でも十分コンペティティブといえるだろう。

もしニコラの計画どおり、米国全土に満遍なく水素ステーションが整備されれば、ニコラトラック以外のFCVにとっても、燃料切れの心配をすることなく、全米のどこへでもドライブすることができる。

FCV普及の最大のハードルが取り除かれる訳で、FCV普及が一気に進むと期待できる。その意味でも、ニコラの挑戦にエールを送りたい。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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