しかし、これに該当する路線であっても無条件に助成を受けられるわけではない。鉄道軌道整備法では、第8条「補助」の規定において、「その資力のみによっては当該自然災害復旧事業を施行することが著しく困難であると認めるときは、予算の範囲内で、当該災害復旧事業に要する費用の一部を補助することができる」とされている(第8条第4項)。復旧費用を支出可能な資力を持つ鉄道事業者は、赤字路線の災害復旧費用の補助を受けられないことになっていた。
今回はこの点が改正され、第8条第4項に該当する以外の鉄道事業者、すなわち、その資力によって復旧可能な鉄道事業者の路線であっても、被災に関して下記のいずれをも満たすという条件で補助を受けられることとなった。
4つの条件を満たさなければならないが、黒字企業への補助ということもあり厳格なのは当然であろう。
また、補助を受けた当該鉄道事業者が配当をする場合の制限(同法第15条の2)については、第8条第5項による場合は除くとされているので、同項による補助を受けた場合には配当に対する介入はされないことされた。
「民生の安定上必要」とは何か
全体として黒字経営であっても、一部に赤字路線を抱える鉄道事業者は多い。赤字路線が災害を受けて復旧の必要があっても、企業経営からすれば投資する動機づけは起きにくい。しかも自然災害に襲われる路線は、地形やその地域の天候上、再び被災する可能性すらある。
公共交通機関としての役割を担うことを強いられる一方、天災で被害を受けても「黒字なんだから自社で全部直せ」などというのは、赤字路線について公共交通機関としての義務だけを高リスクで負わせられるということである。その意味では、今回の鉄道軌道整備法の改正は、地域公共交通としての役割を担う鉄道運営のリスクを和らげる意味もある。
その一方で、私としては「当該災害復旧事業の施行が、民生の安定上必要であること」(第8条第5項第2号)という、この耳当たりのよい規定がどうしても気になる。
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