企業買収は信長流ではなく相手を尊重する秀吉流で−−近藤史朗・リコー社長

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--アイコン社は大株主のファンド、スティール・パートナーズの要請もあり、かつて4万3000人いた従業員を10年間で2万4000人まで減らしてきました。しかし、現状でもかなり多いのでは。

今、リコーの社員は世界中で8万人強いて、そのうち70%くらい(5万6000人程度)が営業サービスにかかわる人です。アイコン社は大半が北米地域ですから、2万4000人は多いなと思われるかもしれません。ただその中には、プリント業務代行などの役務まで全部提供するようなことをやっています。実はわれわれにとって、この役務代行が米国でやりたくてもやれなかった事業の一つ。これを手に入れるだけでも、ものすごく大きなメリットがリコーにとってあります。

銀行などは、これからどんどん大リストラをかけていくわけです。役務などはどんどん外へ切り出すという動きが出てくると思います。その中で受け皿として、伸びていけるだろうという計算もあります。 

--あくまで秀吉流のソフトランディングで行くと。

それがリコーのやり方です。うちの会社はものすごく人を尊重している会社なのです。でも、尊重するということは、引っ繰り返すと責任を問わないというふうになりかねない。それは少し緩みが出てきている部分もあるので、直さなきゃダメだなと思っています。企業というのは慈善事業をやっているわけではないですから、パフォーマンスを必ず問いますよということを言わないとダメだと思っています。

--この10年、リコーは本当に安定して成長してきました。一方で企業として大きく飛躍するとか、まだ他社がやっていないことを先駆けてやるとか、そういう期待感がいま一つ持てない不満を感じますが……。

いま一つじゃなくて、いま二つぐらいないですね(笑)。

企業がイノベーションを起こしていくときの方法というのも、いろいろあると思っているのです。

たとえば自動車メーカーで言えば、トヨタ自動車が造っているのは圧倒的にクルマですが、「よくこれだけ車種を作るな」とあきれるほど造っていますよね。これが一つのやり方だと思います。

一方、ホンダはもともと二輪を手掛けていたわけですが、四輪はおろか、ジェット機もやる、太陽電池も作っちゃう。そういう一風変わったところのある会社です。

では、リコーはどういう会社でいくかと言えば、本業はトヨタでいいかなと思っているのです。しかし、これからわれわれが成長していくうえでは、ホンダ的なDNAも育てていきたいなと思っています。

--事務機に次ぐ第2の事業柱を育てることは考えていますか。

もちろん狙っていますよ。ただ、今の時代的な背景をかんがみて、何か新しいものが必要かと聞かれると、新しい価値というのはそんなにないのです。既存の中から見つけ出していくしかないと思っています。ですから、新たな事業領域というよりは、既存のオフィス分野の中でやれればいいなと思っています。個人的にはカメラなんか大好きですから、力を入れていきますよ。

こんどう・しろう
1949年生まれ。73年新潟大学工学部卒、同年リコー入社。98年画像システム事業本部プリンタ事業部長。執行役員、常務取締役を経て、2007年4月より現職。

(鈴木雅幸、桑原幸作 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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