マクラーレン、6年で年商1000億円の奇跡 ブランドをどう作り、ビジネスに仕立てたか

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そんな安楽よりももっと大事なものがある。それは、本当はレースカーのデザインを続けたかったマレーが、社命でロードカーを作らされることに対する反骨だったのではないかと思う。そこに貫かれた「レースカーと寸分違わぬ思想」という概念こそが以後のマクラーレンロードカーの重要なモチーフになっていくのだ。

驚異的な成長

こうしてレースシーンでのマクラーレンの伝説は、ロードカーの世界でも確立された。つまりマクラーレンはロードカーの世界に、金持ちにおもねらないリアルなレーシングカーのフィロソフィーを持ち込んだことになる。

マクラーレンはロードカーの世界に、リアルなレーシングカーのフィロソフィーを持ち込んだ(撮影:尾形文繁)

マクラーレンF1はレースバージョンなどのバリエーションモデルを追加しつつ1998年に生産を終える。以後、マクラーレンは表立った活動を休止しつつも、メルセデス・ベンツのSLRマクラーレンなどの開発を受託していたが、2010年にそれまでのマクラーレン・カーズからマクラーレン・オートモーティブに社名を改め、2011年に突如マクラーレンMP4-12Cを発売する。

マクラーレンが「カーボンモノセル」と呼ぶレジントランスファーモールディング工法によるカーボンシャシーにV8ツインターボユニットを載せた新たなスーパーカーで、以後着々とモデルラインを充実させてきた。

現在マクラーレンでは3つの商品シリーズを展開しており、ロードモデル全12車種が、アルティメッドシリーズ3車種、スーパーシリーズ5車種、スポーツシリーズ4車種に分かれている。総販売台数は2016年実績で3286台。参考までに先行するライバル社と比較してみると、フェラーリの2016年実績は8014台。同じくランボルギーニは3457台となる。フェラーリとの差はまだ大きいがランボルギーニとはすでにほぼ並んでいる。販売台数が最も多いのは北米だが、アジアでも順調な成長を遂げているという。

経営指標を見ると、2016年のマクラーレンの売上高は973億円。営業利益は98億5400万円。営業利益率10%。1台当たり利益は300万円となる。

マクラーレンのすべての車は英国サリー州のマクラーレン・テクノロジー・センターで1日最大20台がハンドメードで組み立てられており、今年度中にはヨークシャー州に2つ目の生産設備がオープンする。新工場の最大の狙いはカーボンファイバー素材の内製化だ。

これらの計画はマクラーレンの中期計画「Track22」に織り込まれており、2022年までに新モデルならびに派生モデルを15車種投入し、うち半数をハイブリッド化する計画だという。

マクラーレンは昨年10月英国の代表的成長企業に選定された。この短期間での成功と成長の理由については、後編に予定しているマクラーレンオートモーテイブ・アジアパシフィック担当マネージング・ディレクター、ジョージ・ビッグス氏へのインタビューで明らかにしたい。

池田 直渡 グラニテ代表

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いけだ なおと / Naoto Ikeda

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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