キッコーマンが米国に根付かせた「日本の味」 和食ブームを「当てにしない」成長戦略の中身
米イリノイ州のシカゴ市内から車を走らせることおよそ2時間。州境を越えウィスコンシン州に入ると、見渡すかぎり青々とした広大なトウモロコシ畑が広がる。まっすぐ延びる道路をひたすら進むと、トウモロコシ畑が途切れて巨大なサイロの立ち並ぶ工場が現れる。入り口に掲げられているのは、日本でもおなじみのロゴマークだ。
米国進出は60年以上も前
ウィスコンシン州ウォルワースにあるこの工場は、しょうゆ製造・販売最大手のキッコーマンが米国に2カ所持つしょうゆ製造拠点のうちの1つ。全米に向けて数百種類のしょうゆやソースが出荷されている。
「米国で、キッコーマンのしょうゆを知らない消費者はほとんどいない」。茂木友三郎名誉会長はそう豪語する。2017年度の同社の売上高4306億円のうち、6割は海外事業が占める。特に北米でのしょうゆ販売はこの8年で5割近く伸び、業績の牽引役に成長した。
キッコーマンが米国に進出したのは販売会社を設立した1957年と、60年以上前にさかのぼる。当時は日本からしょうゆ製品を輸出、1968年からはコンテナ船でバルクのしょうゆを運び、現地の食品メーカーに瓶詰めしてもらっていた。販売は順調に伸びた反面、輸送費もかさみがちだったため、1973年には前出のウィスコンシン州ウォルワースに工場を建設し、しょうゆの現地製造を始めた。
近年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、海外で和食が流行している。ただ、「和食ブームで大した得はしないし、当てにもしていない」と茂木名誉会長は言い切る。「ブームで広がりがあるのはせいぜい外食店くらい。それよりも家庭で一般の消費者に使ってもらえるようになるのが、(キッコーマンにとって)圧倒的に重要だ」(同)。
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