日本唯一「海底資源掘削」会社に迫る経営危機 債務超過で社長交代、日本海洋掘削の崖っ縁

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新リグ導入には多額の資金を要することから、三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の東銀リースがシンガポールの造船所にリグ2基(「HAKURYU-14」、「HAKURYU-15」)を発注。完成したリグを日本海洋掘削がリース方式で運用する形をとった。

つまり、顧客を見つけリグの活躍の場を見つけるのは日本海洋掘削の仕事だ。だが、原油安の影響を受けてリグの需要は減少。このままでは最新鋭リグ2基が完成しても港につながれたままになってしまうのは明白だった。

そこで、東銀リースと日本海洋掘削は2016年後半、2基のリグの完成引き渡しを延期すると決定。HAKURYU-14を2016年10月末から2018年1月末、HAKURYU-15を2016年12月末から2019年1月末の引き渡しとした。しかし、リグの需給をめぐる状況は好転せず、日本海洋掘削はHAKURYU-14の引き渡しまでの間にリースを組成することができなかった。

東銀リースとの契約では、リースを組成できなかった場合は日本海洋掘削がHAKURYU-14を買い取らなければならない。建造に要した総額279億円のうち既に1回目の支払い(100億円)は何とか終えたものの、7月31日に179億円という2回目の支払い期限が迫る。

日本海洋掘削は、自己資金のみでの対応が困難なため、金融機関やスポンサー候補企業と協議を進めているという。所有リグの売却なども選択肢の1つだが、現時点で打開策を示すには至っていない。

一方、2基目のHAKURYU-15の引き渡し時期も近づいてくる。HAKURYU-14と同様、リースが組成できない事態となれば、300億円規模の支払いが生じることになる。

大株主は支援に消極的

日本海洋掘削の株主には石油資源開発(出資比率30.97%)、三菱マテリアル(同20.05%)や国際石油開発帝石(同6.40%)と大企業が名を連ねるが、各社とも「救済を提案する考えはない」と支援には消極的だ。

一方で明るい兆しもある。原油価格(WTI)が1バレル=75ドル前後まで値を戻してきているため、再び海洋油田の開発案件が増え始めているのだ。2018年3月期のリグ稼働率(ちきゅうを除く)は33.3%と前期に比べ14.7%増えた。

市川社長は「海洋掘削市場は最悪期を脱した」との見方を示し、2019年3月期を確実に営業黒字化。2020年3月期には純利益黒字化にこぎつけ、「経営再建を果たしたい」と話す。

とはいえ、まずは7月末のHAKURYU-14の2回目の支払いを乗り切らねばならない。6月29日には株主総会が開かれ、同日新社長に管理部門を担当する安井泰朗・常務執行役員が昇格する予定だ。株主にどう打開策を説明するのか。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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