自民の参院選挙改革案は党利党略むきだしだ

定数6増は「合区」ではじかれた議員の救済策

自民党がこの改革案を決めたのは、6日に開催した選挙制度改革問題統括本部(細田博之本部長)と選挙制度調査会の合同部会。細田本部長らは「選挙後の『1票の格差』訴訟での司法の違憲判断を回避するにはこの改革案しかない」と力説し、一部の異論を押し切る形で公選法改正案を国会に提出する方針を決めた。

たしかに、司法が是正を求めている「1票の格差」問題では、埼玉選挙区の2増によって、2016年の前回参院選で最大3.08倍だった1票の格差を2.985倍に縮小できて、「3倍以内」とされる「合憲の目安」をクリアする。

もちろん、格差是正には、合区を現在の「鳥取・島根」と「徳島・高知」の2つから、さらに増やす手法もある。ただ、前回改正では、各都道府県別人口数で最下位グループに並ぶ4県がそれぞれ隣接していたため、合区が可能だったが、今回は、人口数で43位の福井、42位の山梨、41位の佐賀と地域がバラバラで、「新たな合区は極めて困難」(自民幹部)なのが実態だ。

さらに、同党は将来の憲法改正で「参院選での合区解消」も目指していることもあって、次回参院選で合区によって選挙区候補からはみ出す同党候補者を比例で確実に救済するための、拘束名簿による「特別枠」と、それに伴う非拘束名簿での得票数下位候補の落選を避けるため、比例の定数4増とを盛り込んだ。

進次郎氏、定数増は「国民の理解得られない」

今回の改正案が成立すれば参院定数は現在の242から248に増える。参院の定数増は、1972年の沖縄の本土復帰をにらんで選挙区を新設した1970年以来となる異例の事態だが、細田氏らは「参院創設時の250は下回るので問題はない」と強調した。

ただ、6日の会合では、国民的人気を誇る小泉進次郎筆頭副幹事長が「(定数の)6増などが国民の理解を得られるのか」と異論を唱えた。たしかに、人口減が進んで国会のスリム化も求められる中での定数増は「時代の流れに逆行する」(閣僚経験者)のは間違いなく、「格差是正」のための定数減を繰り返してきた衆院側にも不満が広がる。

しかし、合区の島根県を選挙区とする細田氏らは「今国会で法改正を行うことが国会の責務だ」などとして小泉氏らを抑え込んだ。日頃は執行部批判が目立つ石破茂元幹事長も、鳥取選出議員として合区に激しく反対してきた経緯もあって、会合では「現実的な案はこれしかない。(反対するなら)鳥取駅前で『この県の代表はいらない』と演説すればいい」と細田氏らを後押しした。

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