トヨタ株主総会で垣間見た章男社長の「余裕」 出席者は過去最多、EVや自動運転に質問集中

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これに対して、寺師副社長は「今やるべきことが2つある。1つ目は未来の成長につながるビジネスの優先順位を上げること。2つ目はトヨタだけでなくグループの力を結集すること。豊田社長の言う『ホーム&アウェー』の考えでグループ全体の事業を再構築しているところだ」と話した。

自動運転についても不安の声が出たが、友山茂樹副社長は「自動運転の第一目的は交通事故を減らすこと。2020年に高速道路の入り口から出口までドライバーの監視下で自動運転を行い、2030年前半までにはもう少し高度な商品を出す」との見通しを示した。

チームトヨタを印象づける

2017年度に過去最高となる1044万台を世界で販売したトヨタだが、ルノー・日産グループや独フォルクスワーゲンの後塵を拝して販売台数としては3位だった。株主からは「台数目標を出して挽回して欲しい」との指摘も出たが、ディディエ・ルロワ副社長は「トヨタは着実な成長をしたい。われわれは1つの目標に突き進む傾向があるので、台数目標を出すと大切なビジョンまで見失う恐れがある。トヨタは顧客それぞれにとってのナンバーワンでありたい」と話した。

豊田章男社長が株主総会で話す機会はごくわずかだった(写真は5月9日の決算会見のもの、撮影:梅谷秀司)

次々に出た質問に応じたのは、いずれも豊田社長の周りを固める役員らだ。副社長や専務、常務など約10人もの役員にマイクが渡されていた。総会で社長自身が話す機会はごくわずかだった。もっとも昨年から会見などでも自ら語るよりも周辺を巻き込む場面が増えており、この株主総会でその傾向がいっそうはっきりした形だ。ワンマンではなく、チームトヨタであることを印象づける必要があったのだろう。

実際、豊田社長はこれまで「社長と副社長が一体になることが重要」と話しており、今年1月には例年よりも前倒す形で大規模な役員異動を実施。自身と副社長6人について「7人の侍」と称し、未来を戦っていく決意を見せている。この株主総会でも全員に発言を促した。裏返せば、周りを信頼して任せる余裕と自信の表れが見え隠れした。

最後に豊田社長がマイクを手に取り、「私にとって株主総会は社長就任後9回目。今日この日から10年目のスタートになる。本日は目指すべき方向など多くのことに気づいた。今後もトヨタが世の中から必要とされる会社であり続けるためにチャレンジしていく。株主にも持っていて良かったと言ってもらえるようにしたい」と締めくくると、大きな拍手が起きた。昔は「株主総会が一番苦手だった」という豊田社長だが、その面影はみじんもなかった。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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