トヨタ車「発祥の地」、実は解体寸前だった 関係者の「聖地」となった試作工場を公開へ

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愛知製鋼刈谷工場の敷地内にある、トヨタ自動車創業期の試作工場。7月18日から無料で一般公開される(記者撮影)

解体するはずたった木造建築物が、なぜトヨタグループの”聖地”となったのか――。

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トヨタ自動車の創業期の試作工場が7月18日から無料で一般公開される。豊田章男社長の祖父である豊田喜一郎氏らが1935年に試作1号車を造った建物に見学室を設置。グループ17社が共同で運営するトヨタ産業技術記念館が「トヨタ創業期試作工場~クルマづくり出発の地~」として、一般の人にも広くトヨタのものづくりの原点を伝える構えだ。

章男社長の「鶴の一声」

試作工場は1934年に完成。現在は愛知製鋼の刈谷工場の敷地内にある木造平屋だ。東棟と西棟を合わせて約1700平方メートルの広さがあり、そのうち東棟に、ガラス越しに工場内部を見られるシェルター式の見学室を設けた。見学室以外の壁や窓ガラス、床などは当時のまま残している。事前申込制で平日1日6回、合計300人まで受け入れる。

トヨタ自動車の豊田章男社長が訪れたのは解体予定の直前だった(記者撮影)

試作工場は愛知製鋼が資材用の倉庫として使っていたが、関係者によると、「耐震強度が低いため、2016年2月末をメドに解体を予定していた」という。そのことを知った豊田章一郎名誉会長が2016年の年明けに訪問。「子どもの頃に走り回った思い出を懐かしそうに話していた」(関係者)という。内山田竹志会長も訪れ、章男社長にも「最後に訪問しておいたほうがいい」と促したという。

 章男社長が訪問したのは2016年2月24日。解体予定日の直前だった。偶然だったかもしれないが、同日は2010年、章男社長が米国での大規模リコールで窮地に陥っていた際にワシントンの下院公聴会に出席した特別な日であり、トヨタが「再出発の日」として毎年大事にしている日だ。

そんな日に試作工場の場に立った章男社長の思いは格別だっただろう。社長は周囲に「創業期のオーラを感じる。このままの姿で後世まで保存したい」と伝え、解体から一転して保存へと動き出した。「まさに鶴の一声だった」と関係者は言う。耐震工事は見学室のみにとどめ、できるだけ当時のままの姿で保存することが決まった。

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