中古マンション選びは「管理」の質で決めよう 組合の内部資料は「開示」を義務化するべきだ

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また、「長期修繕計画」を見れば、今後の建物修繕予定がわかるのはもちろん、たとえば数年後に数十万円、時には100万円単位の修繕一時金が予定されていることも把握できる。多くのマンションでは、新築時に売り主が策定した長期修繕計画を、そのまま変更せずに使用していることが多い。しかし、大抵の場合、新築当初から当面の間は修繕積立金を低額に設定しておき、10〜15年目ごろに一気に数倍になったり、多額の一時金を徴収する計画となっている。

これは売り主が新築販売時に売りやすくするための措置で、表面的には買主に優しいように見える。ただ、買って住んだ後に徴収額がアップすることや、一時金が必要になることを、実は把握していない所有者も多い。優秀な管理組合は、早期にこの長期修繕計画を見直し、毎月均等方式にすることで途中の大幅アップや一時金徴収といった事態を回避している。

ところが、こうした議事録や長期修繕計画などの内部書類については、マンション購入予定者などの第三者に閲覧させることは義務ではない。あくまで任意で閲覧をお願いすることになる。筆者は20年前から、中古マンション取引時におけるこうした書類の提示義務化を訴えてきたが、現実にはそうなっておらず、実は閲覧に応じるマンションのほうが圧倒的少数派だ。

内部資料の閲覧に応じるマンションは自信がある

逆から考えると、閲覧に応じるマンションはその情報開示姿勢だけで好感が持てる。自らのマンション管理運営に自信があるとか、情報開示の重要性を理解している組合員が多いということだ。

修繕積立金の滞納がまったくないマンションは少数であるし、多くの人が住んでいる以上、共用部の使い方に課題が見当たらないマンションなどもほぼ存在しない。経年によって建物が劣化していくのも当然のことだ。要は、こうしたマンションの宿命ともいえる各種の課題について、所有者で構成するマンション管理組合がどんな取り組みをしているのか。その具体的な「姿勢」を見極めることが、中古マンション購入で成功するためには大事なのだ。

米国などでマンションを購入する際には、契約時には各種議事録を含むマンション管理にかかわるあらゆる書類が契約者に送られてくる。その膨大な書類を確認し、納得したといった趣旨で最終的に買い手もサインをする。情報開示が徹底しているし、それがよい管理をするインセンティブとなっているのだ。日本でも、マンション管理の質で思い切り資産格差がつくような世界を、筆者としても早く創りたいと考えている。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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