あのDMMが中古車事業を始めた本当の狙い アプリで始めた買い取りビジネスの精度

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気になるのは不正や犯罪だ。走行距離をごまかす“メーター戻し”、車検証の偽造、そして盗難車など悪質なケースが起こることも十分考えられる。対策としては、最終的な書類手続きの際、免許証、車検証の所有者名義、そして振込先銀行口座の名前が一致することを契約の条件としている。メーター戻しなどについては、これからサービスを進めている中で本当に発生するかどうかの確認も含めて検証していく。

取材時点までの6日間で、すでにDMM AUTOアプリでは買い取り実績がある。実績の数など詳しい内容は非公開とのことだが、年齢分布は20~70代までと幅広い。高齢者の場合、家族がサイドサポートするなどして、契約に至ったケースがある。DMM会員の平均年齢は30代中盤であるため、高齢年齢層がアプリ配信開始の初期段階でサービスを利用したことは、DMMの想定外だった。また、サービス開始が火曜日からだったが平日でも契約実績が続々と生まれたことにも、DMMは少し驚くと同時に、新規事業としてのポテンシャルの高さを感じたという。

こうしてDMM AUTOで買い取られたクルマは、受け取りや配送を委託しているパートナー企業が対応し、オークションなど2次流通市場で換金する。DMMは在庫を持たず、またアプリによる仲介手数料を取らず、収益は買い取り価格と販売価格との差分となる。DMM AUTOは、アプリのシステム開発に徹する。

一方で、カスタマーサービスに十分に注力する。中古車買い取りの事務手続きは比較的簡単であるため、カスタマーサービスのオペレーターがユーザーに手厚く対応することは可能だ。サービス全体での間接費を抑えているため、コスト面でも十分に吸収できるとみている。

「クルマのような高額商品を、スマホで気軽に売買する日が、5~10年以内に確実に来る」。

インタビューの最後、DMM側はそう言い切った。

今後の事業戦略は

今回、サービス開始から6日目の取材だったが、今後の事業戦略については、中古車市場における既存のパイを奪うのではなく、もっと気軽にクルマを売れる環境を作り出すことで、2次流通の台数をベースアップすることを目指すと説明する。

たとえば、新車を買って半年しか乗らないが、クルマを気軽に売れるような、クルマライフのサイクルを活性化させる。

DMM AUTOではこれを、「ドライブ サイクル イノベーション」と呼ぶ。

DMMグループ全体としての、中古車市場への参入の本当の狙いは、中古車売買を通じてのユーザーのデータ収集と解析なのだ。そして、他の事業部との連携に有効活用していく。

クルマは社会インフラであり、クルマを介するライフスタイルは、DMMグループ全体としてのインフラ的な役割を成す可能性がある。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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