「カローラハッチバック」乗ってわかった実力 トヨタが送り出す12代目は何が進化したか

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これ以外にも、引き続き世界中で販売される新型カローラは、より厳しい環境での衝突安全性能を確保したほか、ミリ波レーダーと単眼光学式カメラで自転車や夜間の歩行者を認識し、事故被害の抑制を行う第2世代の「トヨタセーフティセンス」も採用している。

長距離移動時の身体的な疲労度低減

この第2世代では複数の先進安全技術の融合がトピックであり、光学式単眼カメラで車線を判断し道路がカーブしていても車線の中央を極力維持する「レーントレーシングアシスト/LTA」と、車間距離を維持しながら定速走行を行う「アダプティブクルーズコントロール/ACC」(電動パーキングブレーキの採用に合わせて停止保持制御まで行う)の組み合わせにより、長距離移動時の身体的な疲労度低減に効果が望める。

搭載エンジンは1.2L直列4気筒ターボと、1.8L直列4気筒エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた2本立て。このうち、1.2Lターボには前輪駆動のFFと総輪駆動の4WDがあり、FFにはCVTのほかに前述したiMTを用意した。

クローズドコースを走行した限りでいえば、筆者のおすすめはハイブリッドモデル。なぜならば、進化型TNGAの効果がはっきりと体感できるからだ。トヨタのハイブリッドシステムは優れた燃費数値と走行性能を両立するが、これまではハイブリッドシステムのうち重量のかさむバッテリーの搭載位置に起因して、乗り心地が少し荒い、厳密には後席での突き上げが強いと感じられることがあった。

取材の場では今回のカローラのように同一ボディでガソリン/ハイブリッドの両パワートレーンを用意するモデルに交互試乗することが多いが、そのたびに、開発担当の技術者にはその旨を伝え続けてきた。

ハイブリッドモデルであっても、しなやかな乗り心地を実感するまでになった(筆者撮影)

その際、技術者は「われわれもそこは理解しています。しかし基本骨格から変更しないと難しく……。でも、今に見ていてください!」と口をそろえていた。それが今、12代目カローラでハイブリッドモデルであっても、しなやかな乗り心地を実感するまでになった。

1.2Lターボモデルも同エンジンを搭載するC-HRから高回転化とともに多用する3000回転あたりのエンジントルクやピックアップ(アクセル操作に対する反応)も大幅に向上。またFFモデルに用意されるiMTには、シフトダウンを行う際に自動的にエンジン回転を同調させる機能と、発進時にクラッチ操作をサポートする機能がある。

iMTはカローラの使命である「低価格で高品質」を両立させるため、エンジン回転センサーとクラッチ側に組み込んだペダルストロークセンサーからの情報で制御する。これにより低コストと高性能、さらにはシンプルな構造としたことで耐久信頼性も確保したという。

新型が登場するまであと少し。来年にはセダンやワゴンタイプも導入されるとのうわさもあるが、いずれにしろ無理を承知で若作りに努めてきた感が否めなかった歴代モデルと決別し、12代目カローラは移動体としての本質をコネクティッド/デザイン/走行性能という側面から作り込んできたといえる。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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