飯舘村から考える日本の政治の欠陥と処方箋 黒川清氏が田中俊一氏を訪ね、話し合った

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黒川:三条委員会を作っても、トップに気構えがないとうまくいかないね。委員長が決心をして、決めたことを曲げない。いちばんいい例が、公正取引委員会で、委員長だった竹島一彦さん(注:大蔵省〔当時〕、国税庁長官、内閣官房副長官補などを経て、2002年7月〜2012年9月、公正取引委員会の委員長を務めた)はよかった。

どんどん下を引っ張って、ガンガン仕事をやらせようとした。トップの覚悟と責任感がどこを向いているか、自分の仕事は国民から託されたんだという意識が大事です。いつも資源エネルギー庁のほうを向いているような人だと、判断がそっちのほうになびいてしまう。

田中:できない理由を言っていても意味がないんです。大事なのは、どうやってやるかです。科学的に、中立的に、透明な議論を徹底していれば、結局、最後にはそれがパワーになります。事故が起きた後の日本の原子力の生きざまとして、おそらく、それしか生きる道がなかった面もあると思います。

黒川:そういうふうにやっていれば、自然に応援団が出てくるね。

田中:困った国会議員もいますが、しかるべき人は、きちんと見ていてくれて、「田中さん、いまのままでいいよ」と言ってくれる議員もたくさんいました。わたしの国会答弁では、規制庁の職員が答弁書の準備をしてくれたのですが、原則として、ほとんどファクト(事実)以外は使いませんでした。数字やファクトは、忘れるし、間違えることもありますから。相手が何を知りたいのかを聞いたうえで答弁をしないと、相手だって納得してくれませんし、実のある議論にならないと考えていました。

黒川:国会は、委員会も含めて一字一句、全部議事録が残るところが、いいところだね。ほかの記録についてはよくわかりませんが。

飯舘村を歩いてみて感じたこと

――黒川先生は飯舘村を歩いてみて、どうお感じになりましたか。

黒川:川俣町の山木屋地区(注:放射線量が他の地域よりも高く、住民に避難指示が出ていたが、2017年3月31日に指示が解除された。飯舘村に隣接している。2018年4月6日付の福島民報電子版によれば、4月に開校した山木屋地区の小中一貫校には、小学生5人、中学生10人が通学しているという)にある学校を見ましたが、大きな新しい校舎ができていました。

役所としては、帰ってくる人がいるだろうと、ちゃんと幼稚園、小学校、中学校と予算をつけて学校を用意したのでしょう。でも、戻ってくる子どもたちの数が限られているのに、あんなに大きな施設が必要なのでしょうか。まずは小規模の施設にして、必要に応じて拡張できるようにすればいいのに、と思います。

飯舘村には放射線量が高く、現在も立ち入りができない地区がある(筆者撮影)
次ページ予算があったら「使わないといけない」という発想
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